このレビューはネタバレを含みます
あまり話題になっていないかもだが、隠れた名作だと思う。
20年前に人気が出始めのアイドルグループが突如解散。それから20年後に再結成を目指してかつてのメンバーに再会するという話だが、これがなかなか面白い。
メンバーそれぞれの20年の経過というのが如実に表れ、いわば成功しなかった人たちの世界がそこにはある。
だがそれを悲観的に捉えているわけではなく、どこか明るさを含んでいるのが良い。
メンバーそれぞれの個性も特徴的で、まさに一昨年解散した某国民的アイドルグループのメンバーたちのようにキャラが立っている。というか、あきらかにモチーフにしているだろう。
ところどころのシーンも秀逸で、やはり特筆すべきは葵との再会シーンでの加湿器を介した会話。あれには思わず上手いと唸ってしまった。
あとは過去のシーンへの移り方が非常に自然で、『ミッドナイト・イン・パリ』の過去への移り方と同じ上手さを感じた。
他にもラストのコンサートシーンでの松本の表情も忘れられない。彼の幼い頃の辛い記憶が、時を経て昇華できた瞬間があの表情に詰まっている。
お世辞にも有名な役者が揃っているとは言いがたいが、みんな実力者ばかりで、逆に役者のパブリックイメージがない分、各々の役に投影しやすかった。
もちろん監督の手腕に拠るところも多く、
坂下雄一郎という次回作が楽しみな監督がまた一人増えた。
観終わった時にはなんだか切ないような嬉しいような、そんな気持ちになる映画だった。