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Merry Christmas!~ロンドンに奇跡を起こした男~のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.1
名作『クリスマス・キャロル』が生まれるまでの物語。期待以上におもしろかった。

既に人気作家になっていたチャールズ・ディケンズがスクルージのキャラクターを生み出した後、スクルージや他のキャラクターと対話しながら、物語を詰めていくのだけれど、スクルージの心の闇を描こうとすればするほど自分の闇を見つけてしまい、自分自身がスクルージと重なっていく。

ディケンズは幼少の頃にこんなに苦労していたから弱い立場の味方になる作品を作っていたんだ😢。

浪費家な両親のために、それまでの生活が一変してしまい、化学薬品を使う靴墨工場へ売られてしまう。その後のことは描かれていないが、苦労に苦労を重ねて生きてきたのだろう。

見た目は華やかな暮らしをしているが、家計は火の車で借金だらけ。蝋燭も使いきる。ディケンズは派手で借金を重ねた父親と似ていることに気づかず、父親を毛嫌いする。父親は家族を楽しませることが大好きで、寛大で優しかった。

父親がなぜそこまで堕ちてしまったのかがもう少しくわしく描かれていたらよかったのにと思ったが、ディケンズの闇と父親の闇も似ていたのかもしれない。

スクルージがディケンズと対話しながら、人間の闇を見せていく表しかたは、作家の創造性が絵に見えるのでわかりやすかった。

『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』でもそうだったが、何かを生み出す過程を観るのは楽しい。事実とは正確には違ったとしても、読者、観客の楽しみが倍になる。作家は作家自身が物語に組み込まれている。作品と作家の関係を想像するのは二度美味しい。

マネージャーのフォスターさんがめちゃめちゃいい人だった。実在の人かな。
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