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サイドマン:スターを輝かせた男たちのshibamikeのレビュー・感想・評価

3.5
観賞前の私「K'sシネマ、チケット1,800円は高いよ…」

と本作を見ることに対し、二の足を踏んでいたが、ふと
「待てよ…、映画で1,800円だから高いと思うのであって、ブルースのライブを観に行くと思えば1,800円は…安いじゃん!安いじゃん!」
と自分の発想の転換に感心しつつ、意気揚々とK'sシネマへ。1996年アトランタ五輪 有森裕子以来の"自分で自分を褒めたい"である。K'sシネマのスタッフさん達も心なしか自分を祝福してくれているようであった。銅メダルくれ。


ブルースをほとんど聞かない自分でもマディ・ウォーターズとハウリン・ウルフが超大御所ということは知っているが、彼らが凄まじい演奏を聴衆に披露できた影には、彼ら自身の強烈なカリスマだけではなく、彼らのバンドで演奏に徹底していた"サイドマン"なる凄腕ミュージシャン達の存在が不可欠であった。
このドキュメンタリーガーエーではそんな陽の目を見ることのなかったサイドマンである3人にスポットライトが当てられる。
ピアニストのパイントップ・パーキンス。
ギタリストのヒューバート・サムリン。
ドラマーのウィリー・スミス。
その人達である。

X JAPANやL'Arc~en~Ciel、GLAY、LUNA SEA、シャムシェイド、ムーンチャイルド、カスケード、field of viewにも目立たないメンバーは存在し、やはりこういった目立つ目立たないの話はバンドの宿命なのかも知れない。くれないだぁー!突然だぁー!

ブルースの曲や演奏シーンがたっぷり登場して、どれもこれも本当にカッコ良かった。のであるが、あんまり本編の本筋ではないジミヘンの演奏するキリングフロアが自分のすべてをかっさらっていった。呼吸を忘れるほどの爆音・ビート・狂熱。
やっぱロケンローは凄いよ。

サイドマンの3人カッコ良かったのであるが、フロントマンのマディ・ウォーターズとかハウリン・ウルフが映っちゃうと結局フロントマンに見とれちゃった。ハウリン・ウルフの全身使った身振り手振りのボーカルパフォーマンスは釘付けになるよ。

サイドマン達に敬意を払う後続の有名ミュージシャン達が大勢登場し、いかにサイドマン達が凄いか、というのをこれでもかと語るのであるが、こういうインタビューはどうでも良かった。ただ、ボニー・レイットという女性がめっちゃカッコ良かった。

ストーンズがリトルレッドルースターをカヴァーし、それをA面シングルで発売した心意気についても映画で触れられており、それがどれだけ型破りなことか伝わってきた(マネージャーが反対だったのをメンバーが押しきった)。

以前に日本のミュージシャンのインタビュー本を読んで感心したことで、
「光を反射している」というものがある。ストーンズはマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフの発したブルースの光を反射していて、その反射した光を見て我々は「ストーンズカッコいい!」と痺れている。その光の元を辿るとブルースがある。そして、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフが出す光にも元があるかも知れず、そのルーツに終わりはない。何かを見たり聞いたりして「カッコいい!」と感じることができるなら、その人も光を反射することができるかも知れない。
とかそういう感じの話だったと思うが印象に残っている。
ストーンズはキャリアの初期こそブルースの光を反射していたのかも知れないけれど、成熟するにつれて、ロケンローにグルーヴを持ち込み、彼ら自身の光、オリジナルの光を出すようになったのかも知れない。まさしく恒星。

パイントップさんとヒューバートさんは最晩年にグラミー賞を受賞して、嬉しそうにしていたのが、こちらまで見ていて嬉しくなった。
パイントップさんが設立したブルースの音楽学校では若い子ども達が日夜ブルースの鍛練に明け暮れている。めちゃくちゃ太った少年が凄腕ギターを披露していて驚いた。

自分も有森裕子以来の輝きを放てるように、精進していこうと思…くれないだぁー!突然だぁー!
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