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EMMA/エマ 人工警察官のmidoredのレビュー・感想・評価

EMMA/エマ 人工警察官(2016年製作の映画)
4.5
アンドロイドが地味に有能さを発揮するフランスの刑事物です。あんまり派手じゃないロボコップです。お話もアンドロイドさえいなければ、ごくありふれた刑事ドラマなんです。しかしそれが逆に人工知能物としてとても良かった。

このアンドロイド・エマは、途中で「感情」に目覚めません。つまり人間化せず、あくまでも機械として「普通の世界」に混じっているので、その異質さがより際立って見えました。

機能性抜群、コマンドに忠実、そしてスーパー美形。常にどこか不気味なのに、なぜだか愛着が湧いてくる不可解な存在。

これぞロボ、これぞまさしく理想的なアシモフ『鋼鉄都市』シリーズのRダニールの映像化ではないですか。

しかも、くたびれ気味の中年男性刑事と組ませるとは気がきいています。もちろんエマはダニールと違って女性型ではありますが、そんな事はまったく問題ありませんでした。

アンドロイドにとっては性別など洋服やカツラのようなもの。モデル並のルックスなのに、バービー人形のような服で平然と歩くエマが逆に輝いて見えました。

わざわざアシモフのロボット三原則を言わせるあたり、はっきり意識して作ってると思います。ただ、ミステリー要素の方はあってなきがごとしでした。

でも、それもまた良いのです。ストーリーで楽しむよりはむしろ、アンドロイドがリアルに淡々とお仕事するSF世界を見て楽しみたいのです。そこにセンスオブワンダーがあるのです。その点、この作品は評価できると思います。

あと、仕組みは分かりませんが、ルンバのように自分で定位置について「ヨガの眠り」で充電するのもツボでした。色もヤマトタケシに寄せてる気がしたのは気のせいでしょう。

このヨガ充電中に謎の男がきて、スマホで何やらインストールする場面も良かったですね。

いくら人間そっくりに見えても、純粋な少女に好かれても、機械だからいくらでも書き換えられるのだと思い知らされる瞬間です。なんだかんだ刑事たちと馴染んだタイミングでこのシーンを入れつつ、何がどう変わったのかまったく不明のままにしておくのですから、本当にツボが分かってます。

ところで『ロボコップ』はアンドロイドではなくサイボーグですが、ロボコップこそロボットらしいと常々思ってます。
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