Hina

夜の大捜査線のHinaのレビュー・感想・評価

夜の大捜査線(1967年製作の映画)
4.4
よくよく調べてみると、この映画がアカデミー賞を受賞した日というのは、キング牧師が暗殺された6日後に当たる。
1968年の4月4日にキング牧師は銃弾に散り、4月10日に映画「In the Heat of the Night」が受賞した。

この発表による黒人の感情はどうだったのかな。
希望のシンボルだった善導者を失い、白人社会への怨恨極まる翌週に、白人社会から黒人を擁護するような受賞があった。
その両極な扱いに、彼らはどんな思いがしたのだろう?🤔

Wikiで調べると、この映画に関する情報はどれも重要だったけれど、特記すべきは主演のシドニー・ポワチエという俳優のこと。
彼は、黒人俳優というそれまでこの世界に存在し得なかったポストを切り開いた功績者の一人で、映画界のレジェンドの一人と言える。
当時、黒人俳優は他にいないこともなかったけれど、誰もが筋肉マッチョで、当時の黒人のイメージに迎合するような武闘派の役柄を演じていた。
一方、ポワチエは、乱暴な肉体を持とうとせず、あくまで知的な役柄を演じることに執着していた。
彼は、黒人の知性と品格を世に体現したい俳優だった。この点で、映画界のキング牧師みたいだなーと思った。w

この映画は、原作が小説なので、ミステリーとしての質も高いし、ストーリーもしっかりしている。
多様化した現代映画ならともかく、刑事モノにドンパチを期待する客層も多そうな67年の映画なのに、、テーマはミステリーよりも人種差別に重きを置いている。
それまでプリミティブだった映画の中の「西部劇的ヒーロー刑事」を拒絶して、現実の刑事に必要な能力と教養は人種とは何ら関係ないとはっきり叩きつけた作品。

リンカーン大統領の就任からジェットコースターのようにアップダウンを繰り返してやっと辿り着いた1960年代に、まだ夜明けの見えない差別問題に深く切り込みを入れている、紛れもなく映画史に残すべき1作品なんだなーと思いました🥰

その功績はちゃんとアメリカ国家に評価されていて、この映画は、2002年にアメリカ国立フィルム登録簿に登記されたようです。

邦題は「夜の大捜査線」w
ちょっとダサいけど昔っぽくていい笑

でも本当は「In the Heat of the Night」で、夜の熱の中で。って感じのタイトル。
原作小説も同タイトルで、きっと「夜」はまだ夜明けの見えぬ黒人社会を表して、「熱」は公民権運動のような黒人の戦いを意味しているのだと思います。
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