しろくま

あいあい傘のしろくまのレビュー・感想・評価

あいあい傘(2018年製作の映画)
3.6
2022.12.15/273/Abematv
〝めっちゃムカつく。つうか納得いかない。なんなの?うちらのこと25年間ほったらかして。父さんいなくなって最悪だったけど、いつか帰ってくるって思ってて…〟

失踪した父親がいつ戻ってきてもいいように、引っ越しもしないで母さんと待っていたのに連絡もよこさなかった父親。落ちぶれて浮浪者同然の暮らしをしているんじゃないかって心配していたのに、可愛い娘と素敵な奥さんと新しい家庭を作っていたなんて…。そりゃ、ぶちギレて当然。こんなんで父親と娘の感動の再会になるのかと思っていたら…。

倉科カナさんのキレっぷりが見事。そりゃそうだよね。文句たらたらの本音トーク炸裂は観ていて気持ちがいい。寅さんみたいに一目ぼれして浮足立っている市原隼人さんも、優しさ溢れる原田知世さんも、寡黙な談春さんもいい味出していて、それぞれの思いが少しづつ分かってくると…。

あんなにキレていたから、父親との再会は修羅場のようになるんじゃないかと思ったら、まさかの予想を裏切る再会パターン。それはズルい。ジーンと心が温かくなる人情噺じゃん。あいあい傘ってそういうことね。

本作のインタビューや初日の舞台挨拶で倉科カナさんは、自身の境遇が主人公さつきと似ているところがあって、自分の弱い部分をこの映画の中で昇華することができたこと、役を背負って生きた感じがすると話されていた。彼女にとって運命の作品との巡り合いだったんだね。
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