kkkのk太郎

カメラを止めるな!のkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画の撮影クルーに迫るゾンビの恐怖と、その裏にある意外な真実を描いたホラー&コメディ。

第61回 ブルーリボン賞において、作品賞を受賞!
第10回 TAMA映画賞において、特別賞を受賞!

予算300万円の超小規模インディーズ映画でありながらもSNSの口コミなどにより徐々に公開規模を広げ、最終的には30億円以上を稼ぎ出してしまったという、異次元級のヒット作。…下世話な話だが、興行収入の分配比率が気になる。

本作はいわゆる映画制作映画であり、作中劇を冒頭に持ってくるという奇策は大きな話題を集めた。
独特の構成ではあるが、オリジナリティの塊のような映画だ!!…という訳でもない。
生放送でのドタバタ喜劇という点では三谷幸喜監督作品『ラヂオの時間』(1997)に似ているし、前半の展開を後半で一気にひっくり返すという作品構造は宮藤官九郎脚本のドラマ『木更津キャッツ・アイ』(2002)と同じ。
作風も似ているし、本作の監督・上田慎一郎がこれらの作品から影響を受けているのはまず間違いないだろう。
エンディング曲も完全にジャクソン5の「帰ってほしいの」のパロディだし、オマージュ元の影響が全く隠せていないという意味では、仲間内でワイワイ作った自主制作映画という範疇からは抜け出せていない作品である。…まぁ元々商業映画じゃないんだからそれは当たり前なんだけど。

平成末期の邦画においては間違いなく最大の話題作であり、今更説明不要な一本。観たことない人でも内容を知ってるんじゃない?
…そういえばこの映画、公開当時は「ネタバレ禁止!」という文句で売られていたっけね。『サイコ』とか『猿の惑星』とか『帝国の逆襲』とか、有名になりすぎたネタバレ禁止映画っていうジャンルを纏めてみると面白いかも。

確かに、この映画は中盤の種明かしによって映画の性質が大きく変わる特殊な作品である。何も知らずにこの映画を鑑賞した人はとっても驚いたんじゃないだろうか?
そりゃネタを知らないほうが楽しめるんだろうけど、だからと言って作品の構造を知ってしまっていると楽しめないのかというとそんな事は全然ない。
私の初回鑑賞はテレビ放送の時で、内容とか基本的に全部知っていたけどそれでも楽しめましたから😊

仕込まれた大仕掛けばかりに注目が集まりがちだが、この作品の本質は別にそこじゃない気がする。
「JUST DO IT」こそこの映画のメッセージであり、グダグダ御託を並べる前に手を動かせ足を動かせ汗をかけ!ということを猛烈に訴えている作品である。

時間も金もない上、トラブル続きでにっちもさっちもいかない、という主人公のおかれた状況は完全にこの映画の制作状況とダブって見える。というか、現在の邦画界は多かれ少なかれ、どこもこんな状況なんだろう。
そんな進退窮まった邦画界に、いやいやアイデアと情熱と勢いさえあれば何とかなるんだよ!という事を伝えようとしてるのがこの映画であり、本作の商業的大成功により、そのメッセージが100%正しい事をこの映画の制作陣は証明してみせた。
クライマックスの人間ピラミッド、バカバカしいほどに一所懸命な彼らの姿と流れる汗、そして弾ける笑顔に号泣してしまったのは私だけではないはず。
中野量太監督作品『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)を思い出す展開だが、こちらの方が遥かに感動的で美しい人間ピラミッドでした!👍

本作は綺麗な三幕構成。
物語の構造上、第一幕と第三幕は視点こそ違えど全く同じ出来事が描かれている。
これ、下手すればひどく退屈な映画に仕上がってしまう、とても危険な構成である。
しかし、本作では第一幕を完全なるフリに使い、第三幕の種明かしに全てを賭けている。
この種明かしのギャグと熱量、そしてカオスっぷりが半端なく、観客の期待を超えるあれこれを提示してくれる上、あれってそういう事だったのか!!というスッキリ感も忘れずに与えてくれる。
何より、本気の人間が一丸となって何かを作ろうとする様子の汗臭さと楽しさが、観客に忘れていた何かを思い出させてくれる。しかもその何かというのが、傍から見ればバカバカしいことこの上ない「ゾンビ映画」であるということが、より一層の感動を我々に与えてくれるのである。

超出来の良い娯楽作である!…のだが、第一幕目に大きな問題が。
というのも、第一幕目はモキュメンタリー風の手持ちカメラ映像が37分間、ワンカットで続く。
これがめちゃくちゃ酔うんです…🤢
平気な人は問題ないのかも知れないけど、自分モキュメンタリーが凄く苦手。『クローバーフィールド』とか死にそうになった💦
そんな人間にとって、最初の37分が苦しすぎたし、その後の展開も画面酔いのせいでなんかあんまり入ってこない。
個人の体質のせいなんですが、この手ぶれだけはキツいっす🌀

知恵と情熱さえあれば、大抵のことはなんとかなるという事を証明した一作。
出ている役者さんは皆無名俳優であるが、それぞれが最高の芝居をしていた。邦画を観ていると「日本に俳優って50人くらいしかいないのか?」と思ってしまうほどおんなじ人ばっかり出てくるが、無名でもこんなに良い役者がいっぱいいる。
他の邦画も、有名無名問わず、もっと色々な役者さんを起用して欲しいものである。ほんと、邦画って何でおんなじ人ばっか使うんだろう…?

この映画が起爆剤となり、邦画界に大きな革命が起こることを期待していたが、未だに邦画界は辛気臭い映画が主流。
コメディ映画といえばガキ向けのものばっかりだし。
あまりにも邦画界はコメディ映画を冷遇しすぎている!!俺たちはもっと明るくて笑える映画が観たいんだよ!!
と、邦画の現状に文句を言いたくなってしまった💦

他のコメディ映画とは一線を画す意欲作。超ヒットしたのも納得の一本です✨
kkkのk太郎

kkkのk太郎