fuming

カメラを止めるな!のfumingのレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
3.5
この映画は2度始まる。世間の話題をさらった、衝撃のインディー映画である。
キャッチコピーの売り通り、この映画は前半の伏線を後半で大回収する2部構成の作品となっている。前半パートは正直退屈でチープと言うほか無いが、ここをしっかり観ていることが後半パートの面白さへと繋がってくるため、つまらなくてもとにかく観るべし。というか前半パートは何だこのクソ映画と毒気づきながら乾いた笑いを湛えて観るのが正しい視聴スタイルだろう。
そして、後半パート。ここで前半の謎と奇妙だった部分の伏線が怒涛のテンポを以って回収されていく。前半、粗雑に見えた場面も作品の全容が分かると疾走感溢れる絵作りに感じられて非常に気持ちいい。また、後半を観てから改めて前半を観ることで様々な発見があり、リピートして鑑賞することにより楽しみを与えている。
本作ははっきり言って本当に安っぽく、チープである。だがそれが良い。オンリーワンの持ち味となっている。2部構成という点も銀幕作品というよりかは舞台演劇っぽい。したがって、本作は大スクリーンで音響もパワフルな環境で観るよりも、30人くらいだけ収容出来るようなこじんまりした小劇場で観るほうが本作のらしさを感じられると思われる。
そして、この作品の最大の魅力は内容では無く本作そのものの存在だ。内容や展開は世間で騒がれるほどの面白さや真新しさは感じなかった。しかし、ハリウッド等金のかかった大作が跋扈し主導する今日において、全く知名度も金も無いインディー映画が、それも劇場を中心にここまでの広がりをみせたのは1つの奇跡だろう。映画はまだまだやれる。そんな可能性と熱狂を本作は知らしめてくれた。
fuming

fuming