この作品の修飾語はたくさんある。名優ダニエル・デイ=ルイス引退作、世界三大映画祭の監督賞を制覇したポール・トーマス・アンダーソン監督作、アカデミー賞6部門ノミネート、等々。
そんなPTA監督とデイ=ルイスが組んだ物語は、常軌を逸したラブストーリーだった(なにしろ命が掛かってる)。
お互いに不満がありながら、ある一点でのみ成立する愛の形。あの食事シーンは確信と確信がガチでぶつかり合う、凄まじい緊張感があった。
素直な田舎娘に見えたアルマの強かさ。アルマの母性を求めて、全てを受け入れるレイノルズ。シリルにも読めなかった誤算。それもこれも愛ゆえ、と言えようか。
PTA監督の織りなす「幻想の糸」は、角度によって色を変える玉虫色のようだった。