薬物そのもののバッドトリップを描くというよりは、薬物を通してどんな人間関係が作られ、また壊されるかを描いた作品でした。
と言っても堅苦しい映画ではなく、親子の愛を描いたエンタメ要素の高いドラマになっているところがとても良かったです。
近年大活躍のルーカス・ヘッジスはもちろん、やはりジュリア・ロバーツの熱演が涙を誘います。
息子を墓地に連れ出して、「あなたはこのままだと間違いなく死ぬ」というセリフが強烈でした。最愛の息子にそんなことを言わなければならない母の気持ちは想像するだけで胸が張り裂けそうになります。
また、『ベン・イズ・バック』というタイトルを通じて円環構造のようになっているラストのインパクトも凄まじく、エンドロールはしばらく茫然としてしまいました。
私たちは、孤独や不安といった恐ろしく難しい問題と一生向き合いながら生きていかなければなりません。理想と現実のギャップに身を引き裂かれる思いになることもあると思います。それらと1人で戦い続けるのは不可能だと思います。
だから、ベンが薬物に依存してしまう気持ちはよく分かるし、彼を弱い人間だとするのではなく、これは誰にでも起こりうる悪夢であることを心に留めておかなければいけないと思いました。