若い頃から酒浸りの日々を過ごしてきたジョン・キャラハンは自動車事故で車いすの生活を余儀なくされる。絶望と不自由な身体への苛立ちから自暴自棄になっていくが…
キャラハンのファンだったという故ロビン・ウィリアムズが映画化を構想していた風刺漫画家の破天荒な半生を、親友のガス・ヴァン・サント監督が企画から20年を経て映画化した作品。最初の脚本はロビンが主演することを想定していたが彼の死により全て書き換えられたという。
映画界ではハンディキャップ物というジャンルがあり、名優が一度は演じたがるらしい。確かにこの分野の役を演じ名を馳せた役者も数多くいる。
ロバート・デ・ニーロの「レナードの朝」なども有名だが、実はこの役は最初はロビンが演じる予定だったのがデ・ニーロからの強い要請で医者の役と交換されてしまった。それだけにロビンとしては、この役を余計にやりたかったのではないか?
ロビンに代わり偏屈だが魅力的なキャラハンを演じたのが、旧知の仲であるホアキン・フェニックス。あの大ヒット作「ジョーカー」の前の作品で彼の役者としての振り幅の広さが窺える。監督は、まだ二十歳だったホアキンを1995年の「誘う女」で起用し、彼の役者としての才能を既に見い出していた。
キャラハンに扮するフェニックスを囲み、ルーニー・マーラ、ジョナ・ヒル、ジャック・ブラックといった芸達者たちが見事なアンサンブルを生み出している。
ちなみにスケボー少年たちの中の一番小さな子は、ジョナ・ヒル が初監督した映画「mid90sミッドナインティーズ」で主人公の少年役を演じていたサニー・スリッチだ。こちらでも得意のスケボーの腕を披露している。
ジョン・キャラハンと聞いても正直ピンとこなかったが、彼の風刺漫画を見るとその独特なタッチは何となくではあるが見覚えがある。
どん底に落ちた彼にとってイラストを描き続けることが、生きていく糧となったのだと思う。彼にとっては、人生そのものが風刺漫画だったのではないだろうか。
因みにミュージシャンでもあった彼の歌声は、エンドクレジットで聴くことができる。
2019年9月に劇場にて鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。