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港町のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

港町(2018年製作の映画)
4.1
岡山県牛窓の港町のおばちゃん、おじちゃんの日常を撮ったドキュメンタリー。

数年前に邑久~牛窓~小豆島を旅したことがあったのと、かつて魚市場に勤めていた叔母が急逝し、穏やかな海を見ながらゆるゆるしたかったから。

牛窓~邑久の海岸線は入り組んでいて、砂浜は少ないのに浅瀬で、海と人がとても近い。海が人を拒絶していないようにみえる。でも瀬戸内の海は穏やかにみえても潮の流れがきつい。

腰の曲がった現役漁師のおじいちゃんは舵を握り一人海に船を繰り出す。魚を一匹ずつ網から外し分ける。それをずっと撮ってる。カメラがあまりぶれていなくて、船酔いしなかったのかなと気になった。魚を仕入れた店では魚を下ろす。その手捌きをずっと撮ってる。

奥さんが魚を売りに行く。安くてうらやましい。
お客さんが不在でもその人の予定がわかる。

皆顔見知りのようだから、独居でも何かあっても誰かが気がついてくれそう。都会のマンションで独居だと孤独死していても気づかれない。

登場する人は高齢者ばかり。元気だ。働いているし、集まってはわいわいおしゃべりしている。話し相手がいることがいちばんの健康法。

どこも猫だらけだった。贅沢な猫まんまだった。お魚くわえたどら猫もいた。

初めて行ったのに懐かしさを覚えた邑久の干潟。
もし高校生だったら、ドラマみたいに堤防の上を男子高校生と歩いて、「都会の大学に行っちゃうんだ…」と青春したいと妄想した牛窓。

なのに本作品には若者は出てこなかった💦。でも高齢化が進んでも元気だからいいじゃない、自分たちのペースで生きる。働きたいから働く。
叔母も75歳まで働いていて元気だった。なんて途中まで思っていた。

3分の1ほどアップで写り込む久美子おばあちゃん。牛窓のガイドさんみたいに、何でも話してくれる。噂話も、嫁姑問題も。正直、想田監督は我慢強いなと思っていた。小さなイラを感じてしまったから。それが、なんだかどんどん悲しくなってきた。寂しそう。昔ながらの港町にも空き家が増え、悲喜こもごもの長い人生を旅人である監督ご夫婦に話す。誰かと話したかったんだね。

耳の遠い漁師のおじいちゃん、杖をついても一緒についてきてくれるおばあちゃん。久美子おばあちゃんの細い脚での加速度のついた歩き方が気になったよ。大丈夫かなと。

人の話を自由に聞くことがドキュメンタリーとして成功するのだと思った。

港町の住民の変化、コミュニティのありよう、高齢者のおかれている現状が浮き彫りになっていた。

それでも、
牛窓に住みたい願望が募った。
おじいちゃんの漁師のお手伝いしたいと妄想した。

想田監督はニューヨークから来たと言っていたけれど、その後牛窓にお住まいになっている。新しいことを足すのではなく、古いもの、自然を大切にし、あるがままの牛窓を受け入れていくことが大切だとFacebookで語っていた。
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