madokaaa

レイニーデイ・イン・ニューヨークのmadokaaaのレビュー・感想・評価

3.5
安定のウディ・アレン。
しばらくハリウッドと距離を置いていたアレンだけど、「カフェ・ソサエティ」「女と男の観覧車」を経て、この度本格的に故郷のハリウッドへご帰還なさった模様。

ニューヨークの街並みも彼に撮らせるとこんなにも情緒溢れる景色に映るんですね〜
ヴィンテージ・シックな雰囲気と古き良きニューヨークの情景が素敵。
それに「ギャツビー」っていかにもフィッツジェラルドの小説からとってきたような名前も小洒落てる。
アレンファンとしては、どうしても隠し切れない彼の懐古主義的思想が随所に散らばっていて思わずニヤリとしてしまうこと間違いなしです。

モラトリアム真っ只中の大学生・ギャツビーを演じるのは現代のアイコニック的存在、ティモシー・シャラメ。
ギャンブルとピアノが趣味でクラシカルなものを愛するギャツビーは、一見マイルドなんだけど、どこかに選民意識があるようで随所に見えるスノッブさと薄っぺらさがたまらない。
もともとマンハッタン出身の彼は、有名映画監督のインタビューという大役を掴んだ彼女のアシュレーのために古き良きニューヨークを巡るプランを組むのだけど、いざ当日になると2人の予定は瞬く間に狂い始めてー。

ウディ・アレン曰く「街は雨が降るとよりロマンティックになる」そうです。
雨の日ってとにかく憂鬱。足元は汚れるし、服も髪もキマらなければ、何だか気分も曇りがち。何かとうまくいかないことが多い。
正直、傘を持つのだって面倒臭いのに、複雑なものなんて聞くのも見るのも煩わしい。
ただ、そんな不自由さと雑音の中だからこそ見えるものもあるのかもしれない。
余計なものが遮断された雨の中で見えるもの。それは等身大の気持ちかもしれないし、蓋をしておきたかった真実かもしれない。
割り切るには多少の時間はかかるけれど、土砂降りから雨上がりへグラデーションになっていく空の下で、次第に視界がクリアになっていく感覚はなんだかちょっぴり心地良かった。
何でもありの雨のニューヨークがさらけだす真理。
人間関係なんて白黒つけれるものじゃないし、時には心変わりしたり、がっかりすることだってある。
少々荒治療ではあるけれど、ある意味で他人との関係における本質に目を向けさせ、シニカルにも心を浄化してくれるユニークな作品。

雨の降る憂鬱な午後にいかがでしょう。
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