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とんかつDJアゲ太郎のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

とんかつDJアゲ太郎(2020年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

渋谷の人気とんかつ屋の冴えない跡取り息子が、惚れたスタイリストの気をひきたくて、DJを目指す青春コメディ。洋画で云えばWBというより、ニューライン制作といったB級感あふれる趣きです。

物語は単純明快。とんかつ屋「しぶかつ」の三代目アゲ太郎(北村匠海)はキャベツの千切り担当で、怖い親父(小柳トム)にとんかつの揚げを任された事がない。弁当の配達で訪れたクラブのDJオイリー(伊勢谷友介)が「しぶかつ」の大ファンで、更に、向かいのビルで働く憧れの苑子(山本舞香)もクラブに居たため、アゲ太郎は無謀にもDJになろうと決める。幼馴染のラブホの跡取りのホテルの一画で練習を始めるが、パッとしない。そんな時、金のないDJオイリーが「アゲ太郎の師匠になる」と称して接近、ホテルの一画に居候を決め込む。
「とんかつ」を揚げ客を満足させるのと、クラブの客のアゲは一緒だと気づいたアゲ太郎は「とんかつDJ」を名乗りネットで人気が出始める。DJオイリーは大きなイベントにブッキング。しかし、経験のないアゲ太郎は身勝手なパフォーマンスで、イベントは失敗に終わる。ブックしたDJオイリーの評判も地に落ち、アゲ太郎もふさぎ込む。しかし、幼馴染や家族の力を借り、アゲ太郎は再起を懸け、DJコンテストに出場するのだった…

集英社の原作マンガは川島雄三監督の名作映画『とんかつ一代』から発案されたという逸品。CXの製作(Aoiプロ制作)によるB級コメディは『一度死んでみた』も同様で、似通ったテイストですが、広瀬すず主演(20歳位)と比べると、こちらの方が少しだけ年齢層が高い(20代後半)人向き。
監督はまだ20代の二宮健。曲者俳優を上手く使いこなし、無難にまとめていますが、フロアの演出は薄っぺらかった印象。監督と云うより助監の業務でしょうが、群像の演出を疎かにしたのは残念。
主題歌には“世界No.1ヒットメイカー”とも云われるブルーノ・マーズのデビューアルバムの収録曲、その他ベリンダ・カーライル、NACKなどのA級の洋楽を駆使。惜しかったのは、クラブでのダンスのクオリティが今一つな事。ロックダンス系の踊りが多いのですが、プロのダンサーを起用し、ミュージカルの要素を加える事で深みが出せた様な気がします。

全体的には、オフビートなマンガを実写映画化する難しさを感じました。クライマックスのDJコンテストでの盛り上がりも、どこか緩さがただよい、満足度が高くはアガりません。そもそも、出オチ・ギャグ的な原作だけに、余程作り込まねば底が浅くなるのですが、主人公の再生を、商店街の仲間による叱咤激励という定番に嵌めただけの作りに限界感は否めません。但し、熱く盛り上げれば原作の色を失うし、ギャグ漫画の実写化の際、笑いとドラマのバランスはとても難しいのだなぁと感じました。
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