すず

天国の口、終りの楽園。のすずのレビュー・感想・評価

天国の口、終りの楽園。(2001年製作の映画)
3.5
テノッチ、フリオ、ルイサ
生命欲に満ち溢れた青年2人と女性1人の旅路。意気揚々と車を転がし旅立った3人は秘密の海辺〝天国の口〟をめざす。

メキシコ内部の景色が垣間見えるロードムービー。そして、過去の記憶、秘密、刹那的な衝動、現在地と未来、3人それぞれの関係性の移ろいを見つめていく。ロードムービーは地平を旅しながら、己の内面へ向かう旅でもある。

路上文学的な語り口が何かを予感させつつも、とにかくセックスの話ばっかりしてて、くだらないやり取りも含めて、ずーっとそんな事ばっかりやってるので、途中から、特に意味のない映画なのかなと思ったりもしたけど、予想を上回るショッキングな展開、そしてエンディングを迎えた瞬間に、全てが奇妙なほど腑に落ちたような気持ちにさせられた。

この物語には生命の躍動の象徴としての〝性〟があり、この旅の終焉と共に、徹底的に青春の終わりを告げるかのような苦味とノスタルジー、人生や生命の儚さを感じさせる。やはりその対比として、彼らの情欲と生命の躍動したロード•トリップは、儚い人生の煌めく一瞬として強烈な印象を刻みつける。

鑑賞中よりも鑑賞後に、改めて意味が生まれるような作品だった。そして『天国の口、終わりの楽園。』という美しい邦題と、〝もう、会うこともない。〟の触れ書きに何だか全てが収斂していった。

人生讃歌とは趣が違うけど、人間というものを真っ直ぐに見つめた美しい脚本だったのだと思う。美化しすぎかな?

「人が死んだ後も思い出は生き続ける。ルイサは 自分がいつまで人の心に残るか考えた」

「人生は波のようなもの 流れに身を任せて」


※『南へ行けば』(2009)を観た時、『ブラウンバニー』ぽいなと思ったけど、それよりも『天国の口、終わりの楽園。』ぽいな。
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