【第58回ヴェネツィア映画祭 脚本賞】
今やハリウッドを代表する巨匠となったアルフォンソ・キュアロン監督の初期作品。青年二人と人妻が「天国の口」と呼ばれるビーチに向かう話。
キュアロンならではの流石の展開力、美しく整理された語り口が既に完成されている。
ポンポンと進むので飽きずに観ることができた。それでいてロードムービーとしての叙情性も持っている。
撮影も非常に美しく、まだ荒々しいところはあれどキュアロンらしいバランス感覚がいい。
一種の青春ものであり、モラトリアムもの、と言えるかな。今後どうすればいいのか分からなくなってしまったものたちが、ロード・ムービーを通じて少しの希望を見出していく。たとえ続かなかったとしてもこの経験はきっと役に立つ。
今のキュアロンからは想像つかない、ささやかな小品である。『ROMA』ほどの完成度には至っていないが、十分楽しめる一作だった。