空海花

ブレッドウィナー/生きのびるためにの空海花のレビュー・感想・評価

4.0
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ブレンダンとケルズの秘密 』のアイルランドのアニメーション・スタジオ、カートゥーン・サルーン
その設立メンバーのひとり、ノラ・トゥーミー初の単独監督作品。
本作によってスタジオは3度目のアカデミー賞ノミネートという快挙。

原作はカナダの作家デボラ・エリスの児童文学『生きのびるために』
舞台は2001年アメリカ同時多発テロ事件後
タリバン政権下のアフガニスタン
主人公は11歳の少女パヴァーナ
戦争で荒廃したカブールにある小さな家に、教師だった父、作家の母、姉、そして幼い弟と暮らしている。

女性は本を読むのも禁止だが、
パヴァーナは父が語る物語を聞いて成長したため、ぐずる弟によく物語を話聞かせていた。
作家の母の影響もあり読み書きもでき、
代読、代筆も仕事になる。
監督は高校を中退し、工場で働いていたが長時間労働の間、耳栓をしてベルトコンベアを注視していなければならなかった。
その時に何時間も自分に物語を聞かせていた経験がパヴァーナに息づいている。
アニメーションへの夢に諦めずに向かった監督の姿が、彼女に反映しているのだろう。

原題「The Breadwinner」は一家の担い手の意。
父がタリバンに連行され、女性だけでは働くことも食べ物を買いに行くこともできなくなる。
パヴァーナは長い髪を切り、少年になることを決意。
そして父を救い出す方法を考え始める─

Netflixでも配信されているが
やはりスクリーンのカブールの町並みは美しく、2Dの手描きアニメーションのあたたかみに愛おしさを感じる。
また劇伴はよくあるアニメの明るさはなく、緊張感や不安が演出されるのでリアルさが増した。
パヴァーナの語る物語の表現は切り絵アニメーションで
おどろおどろしい炎の色の演出も良く、色彩も豊か。
切り絵好きだな😌
音楽と相まってより没入できたので映画館の良さは引き立った。
パヴァーナをはじめ声優の半分はアフガニスタンにルーツを持つ俳優が担当
音楽にはアフガニスタン国立音楽院の若い学生たちが参加しているとのこと。

製作に協力を申し出たのはUNHCRの特使であり、アフガニスタンで少女たちの学校教育を支援するアンジェリーナ・ジョリー。
パヴァーナのような少女はたくさん居て
彼女たちが家族を支えている。
その少女たちの存在と努力を忘れないため、と彼女は語る。
パヴァーナも劇中で、髪を切った少女に会い、友人となる。
彼女との約束をいつか果たしてくれると願うことが、希望となる。
再びタリバンに占領されたアフガニスタン。
でもその約束は必ず果たされなければならない。

女性禁止の文言が目立つだろうが
そこに注視しないでほしい。
もっと多く問題は山積みだ。

パヴァーナの語る物語の最後は、
母も口にできなかったこと。。


2021レビュー#169
2021鑑賞No.382/劇場鑑賞#69


Netflix、アニメだからといって
これはエンドロール途中で止めないで😣
空海花

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