ひろぽん

恋は雨上がりのようにのひろぽんのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
3.9
陸上部のエースだった17歳の女子高生橘あきらは、アキレス腱の断裂で陸上ができなくなってしまう。落ち込んでいた病院帰りに、ファミレスの店長である近藤正己が優しく声をかけてくれ、あきらは45歳の店長に恋をしてしまう青春物語。


17歳のクールで真っ直ぐな少女と、冴えない45歳のファミレス店長の歳の離れた恋物語かと思いきや全くそうでなはなく、人生の葛藤を描いた物語で2人の再生に焦点を当てているところがとても良い。

短距離の記録保持者である天才の、怪我で陸上ができなくなるというどん底からの再起と、ファミレスの店長をしながら小説家という夢にしがみつき、家族がありながらも夢を追い続ける近藤の再起のお話。

必死に打ち込んでるものがある日突然なくなってしまったとしたら、他の何かに執着してしまう。恋愛でもなんでも自分の感情の雨やどりができるものを探して。

図書館であきらが店長にオススメの本を聞いた時の返しが秀逸で、どこかに橘さんを呼ぶ本があってそれが今の君に必要な本だと言う。こんな風な質問をされたら何かしら自分のお気に入りの本を進めてしまうはずなのに、こんな答えを出す店長は本当に文学が好きなのだと感じる。

冴えないおじさんで周りから臭いと言われているのに何故クールな女子高生が惚れてしまうのかが、店長の言動を見ていると理解できる。いつも冷静で大人の余裕や考え方、それとほんの少しの優しさがあるからなんだと思った。

永井聡監督の映画は、映像やカメラワーク、音楽がとても良くて、そこから作り出される美しい世界観の演出が好き🎧𓈒𓏸
それに相まって小松菜奈の食事のシーンや、時折見せる涙はこの世界の何よりも美しいと思わされる。街を駆け抜ける小松菜奈の疾走のシーンや、綺麗なフォームは画面に釘付けになるほど迫力がある。

脇役として登場する葉山奨之や磯村勇斗のキャラは彼らの最高のパフォーマンスを引き出している適材適所の役だと思う。

ラスト10分ほどであきらが玄関で靴紐を結びながら朝練に向かう時に流れる伊藤ゴローのサントラ『恋は雨上がりのように〜夜明け〜』と映像がシンクロしていて気持ちが高まる最高のシーン。

ファミレスでバイトしている時が落ち込んでる雨やどりの状態を表していて、部活に戻った時には雨がやんでおり気持ちが晴れてる状態を表してるのかな。誰しも人生の辛い時には1度立ち止まって雨やどりをするけど、雨は必ずやむからまた走り出して再出発する!

恋愛的な愛情だけでなく、友情や家族愛も含まれるとても爽やかな物語。雨がやんで太陽が出てきて、キラキラ輝く青空が見れる時の様な心地良さ。
ひろぽん

ひろぽん