猫エッグ

恋は雨上がりのようにの猫エッグのネタバレレビュー・内容・結末

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

本気で突っ走って疲れた時、誰でも雨宿りしたいときがある。その時に、傘に入れてくれて、一緒に雨が上がるのを待つ「優しい大人」がいてくれたら救われる。

アキレス腱の断裂をして陸上に挫折した主人公のあきらが、バイト先の店長への恋を通して、立ち直っていく物語。

思春期であれば、きっと誰でも大人との恋に憧れる。ただ、それは純粋な片想いというより、過去に周りの大人に抱えられ損ねた愛着を投げ込んでいるような恋愛。思春期の子たちは、それを乗り越えた時に大人に一歩近付くのだと思う。その時期に、大人が彼らの想いに真正面から応えず、それを一緒に抱えたまま見守っていることはとても大事だし、大人にはその責任があるのだろうなと思わされた。
店長もその責任を果たしていて、あきらの想いをほとんど宙ずりにしたままで、拒絶するでもなく、ずっと見守っていた。

また、店長が言った言葉、「橘さんといると、忘れていたかけがえのない財産というのを思い出すことができる」というのも、とても誠実な言葉で涙が溢れた。本当にそれ以上でも以下でもなくて、若い子から好かれることで自分の若かった時を思い出すけど、それで今の大人としての自分から逃避すると、きっと子どもは失望する。店長はそのことに気付いていて、あきらの夢を奪うわけにはいかなかったから「友達」と言ったのだろうな。

店長が遠回しであきらを陸上に復帰させようとする行動と言葉が優しくて、本当に優しい大人だなと。
「来月のシフトのことなんだけど。あれ、全部は入れられないから。というか来月は、入らなくていいかな。人手は足りてるんだ。来月も、再来月も、その先もずっと、入らなくていいから」。
店長が若さを利用する大人ではなかったから、あきらが立ち直ることができたのだと思う。

自分も、もし自分の傘に雨宿りした人がいれば、晴れた時にその背中をそっと押せる大人になりたいと思わされた。雨が降り続ければいいなと思うのではなく、晴れの日に無理やり傘を押し付けるのでもなく、心から晴れを願っている、そんな、店長のような優しい大人になりたい・・・。

大人への一方的で結ばれない恋も、その時はする必要があったからするのだと思う。
店長との思い出の一つ一つは雨宿りで、それら全てがきっかけで立ち直れて、やっと雨が上がったんだろうな。見終わってからタイトルがより沁みた。良作。

その他:
・大泉洋と戸次重幸のさし飲みは「水曜どうでしょう」感(笑)安定の二人だなぁ。
・大泉洋と小松菜奈のキャスティングが、本当にこの二人で良かった!と思える演技や空気感で最高でした。
・最後の場面の小松菜奈。一瞬で涙を浮かべるのが凄い・・・。
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