麟チャウダー

恋は雨上がりのようにの麟チャウダーのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
3.7
綺麗な作品だった。映像、展開、物語のまとまり方、雰囲気、青春の眩しい風景、恋の行方と夢、その全てが綺麗に映った。役者陣は全員ハマり役だったなって思う。受験やスポーツ系のテレビCMみたいな若者のキラキラした時間を映すのが上手かった。

全体的に綺麗だったし、汚れてしまわないほどには物語が丈夫な精神をしていた。この物語に影を落とすのがもう元の状態には戻らない怪我なんだけど、そんな主人公を励ますのが雨だったのがいいなって思う。雨ならいつか上がるし、雨なら言い訳や理由になる。悲しい物語じゃなかったのが一番良かった。
また晴れるっていうのを描いていたし、雨が降ったっていいじゃないか、って描いてもいたなって思う。雨が降ったから始まる物語があって、雨が上がることで始まる新しい物語もあるんだなって。いつだって終わるんだし、いつからだってまた始まるんだしっていうのが店長っぽい。それでいいじゃない、って。

その中でも、ちゃんと考えてくれてる人や想ってくれてる人が周りにいるって事も描かれていたのが良かった。嫌な気持ちにさせる登場人物をひどい奴、嫌な奴で終わらせないあたり、優しいなって思った。その人なりに考えてくれてはいるって分かるまで関わり合いを描くことで、和解、譲歩、尊重などの形でその人なりの理解を知ることができたのが良かった。

周りの人達との関わり合いで自分ができてるって、気付かせてくれるような関係が起こっていたことは素敵だなって思う。どれも未熟で、不器用な関係性だけどそこからでしか学べないから、それが最悪の関係性じゃなかったからこそ最悪の展開は無かった。それが良かった事なんじゃないかなって思う。
自分が所属する環境や関係から自分を推し量る。その結果が、自分が納得の行くいい方向に進んだのなら良かったんじゃないかな。

最後の場面は凄く好き。一瞬、ライバル校の陸上部全員を車で轢き殺すのかなとか、くだらないこと思ったりしたけど。ちゃんと素敵なやり取りをしてて、凄く好きな終わり方だった。

すれ違った偶然、お互いに気付いて立ち止まって言葉を交わす。
元気?って聞いてくれて、自分の状況をつい教えたくなる相手として話してくれた。
元気って伝えられて、自分の状況を喜んでくれている笑顔を見れた。
お互いに「元気?」って聞き合えて、今の自分達のことを知れて、それで別れるんじゃなくてこれからのことも話せた。

大切に想ってる人同士の「元気?」って聞き合うやり取りって、なんでこんなに素敵なんだろう。

他の誰にとっての友達という関係よりも、主人公にとっては大切な友達になった店長。お互いの存在に励まされて、お互いが新しく進み始めた。たぶん2人とも、自分がお互いをそうさせた事に気付いていない。自分が救われただけで、相手を救ったと思ってなさそう、相手が強いからだって思っているんだろうなって思う。頑張れって思った、2人ともに。

進む方向は違うけど、終わったけど、終わらない気がして。ここから新しく始まる気がして、いいなって思った。


夢を持つのは自分でだけど、夢を追いかけるのは誰かのおかげかもしれないなって思った。

この恋があったから今があると思えるなら、実らなかった恋もその先で進んだ道も愛せるといいなって思う。きっとその時には必要だったんだから、間違ってはなかったのかなって思う。間違いにならないようにしてくれたし、間違いにならないようにできたんじゃないかな。

この先を、続きを見せてくれないから綺麗な作品なんだと思う。他人がどうこう言う必要の無い関係で、そういう物語だから、この先や続きに他人の言葉が必要ない。他人の意見を必要としない未来だから、未来が描かれないことで、未来が綺麗なまま終わることができたんじゃないかな。
この先の未来に、まだ誰も口を挟んでいないから綺麗なまま終わったって感じてるのかなって思う。
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