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恋は雨上がりのようにのシネマノのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
3.4
「小松菜奈というラインジングスター、その扱いの難しさ」

なんとも言えない、何を言えば良いのか分からない。
観る側の一定数は小松菜奈という役者に魅せられたくて鑑賞に至る人も少なくないはず。
そうすると、ただただ結構いいお値段だったのにそれなりの料理を出された店みたいな印象の映画だった。

その魅力はただカメラを向ければよいだけ、ではなく。
その表情や声をうまく演出できてこそ、輝けるものが焼き付けられるはず。
本作はただただ高級食材を皿に載せて提供してしまったような、消化不良を起こしてしまう一作だった。

そこに映画演出的なうまみは添えられておらず、垂れ流される制服姿の美人女優。
加えて、その女優の表情や声、眼差しにこそ料理のしがいがあると思うのだが、無愛想を表すのがゴミを見るような目の一言。

主軸の二人以外には重きが置かれていないからこそ、物語のキーとなるはずの手品についても店長側には脈絡はなし、ならば手癖かと見紛う演出に疑問が残る。
その後のドラマに続く、年齢差からくる人生の背中の押し合いがあるからこそ、源たる出会いに何らかのフィクション的ドラマが欲しいと望んでしまった。

しかし、そこは原作もの。
未読の自分に文句を言えたことではないし、
描きたかったのは恋愛ではなく意図せずして互いの背中を押し合うことになる男女関係なのかもしれない。

せっかくのライジングスターも、それなりの演出の前では輝けず。
いつかその圧倒的な存在感でもって代表的な傑作を残してほしいなあと、ただただ思う内に本作は終わっていた。
消化不良だし、物足りない。
特に余韻に浸ることもなく、意識は次の何かへとシフトしていく。
決して悪い映画ではないと思うし、出演者に好きな人がいれば観ても良い一作かと思う。
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