April01

リヴァプール、最後の恋のApril01のレビュー・感想・評価

リヴァプール、最後の恋(2017年製作の映画)
4.2
✨グロリア・グレアム✨
良い拾い物をした!アマプラ見放題終了迫ってる中、出演者が好き、批評家評価わりと高い、一応見とこう、という軽い気持ちだったのに。儲けた気分!

アネット・べニングは、映画界でそれなりのキャリアを積み、それなりのポジションにいて、それなりに大御所で大女優ではあるけれど、例えば「アメリカン・ビューティー」で、なぜオスカー取れなかったのか。
例えばMCUの「キャプテン・マーベル」でも大女優の風格という感想を持ったし、自分にとってアネットの演技における佇まいには、万人受けの人気女優が持ちえない絶対的な空気を感じる。

実力あるのに、商業主義的な人気の尺度においては過小評価されてる方だと前から思っていた気持ちが正しかったと本作で確信。

舞台でロミオとジュリエットの朗読劇をやる場面、すべてのオスカー人気女優に、あの演技ができるかと言ったら、出来る人は限られてるんじゃないかな。

好みは人それぞれで何を基準に評価するか、という問題になるけれど、自分はアネット・べニングの演技は超一流だと思ってて、本作をたまたま観て、自分の評価の正しさを、自分勝手ながら再確認させてもらった。

ある哀しい転換点となる人生の1幕において、なぜそれが哀しい転換点となったのか。
そこに関わる人間が2人いたら、そこには2つの違う物語がある、ということを、2つの視点から同じ場面を2回見せる手法が自分の感じている事とマッチして効果的に胸に迫る。

レビューでも何かにつけて善悪二元論をやめろ、と吐きまくってる自分の暴言に通じるものがある。
事実は一つだけどその事実が存在する裏には、良いか悪いかで簡単に割り切れない複雑なそれぞれの気持ちがあるということ。

グロリアさんの女優人生と私生活にも思いを馳せ、人生というものはかくも複雑。
でも誰かを想い想われるという気持ちはかくもシンプルなものか、と、その複雑さと単純さのコンビネーションに普遍性を感じ、長い年月の一瞬を切り取ったようなこの物語にしばらく心を奪われて呆然とする。

リヴァプールのゴツゴツした質実剛健な労働者気質の漂う無機質な風景の中に暖かい家族と本当の愛があり、一方の温暖な気候で波音の聞こえる夢の中のような素敵なビーチハウスのあるLAや、進歩的でアート感に溢れて才能の集う都会のニューヨークは、成功のシンボルではあっても虚飾と虚栄にまみれてるという対比が効いている。
町のバックグラウンドを上手くストーリーに組み込んでいる。
邦題、苦労したと思うけれど、リヴァプールの物語ということを、全面に出したことは正解。

007シリーズの製作サイドの重鎮として有名なバーバラ・ブロッコリさん、親の七光りという権力を自由に使って活躍しているいう少しひねくれた見方をしてたけど、本作の製作陣という事で、自分の浅い印象を少し改める気に。

実在の過去の女優を演じると言えば最近だと、「マリリン 7日間の恋」でマリリン・モンローを演じたミシェル・ウィリアムズ、「ジュディ 虹の彼方に」でジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガーなどが思い起こされ、それぞれ素晴らしいけれど、申し訳ない、自分はグロリア・グレアムを演じたアネット・ベニングが最高!と言わせてもらう✨
April01

April01