このレビューはネタバレを含みます
今のところ2019年No.1傑作映画。
戦後、東西冷戦に巻き込まれた半島のその後を我々日本人は驚くほど知らない。
中国が後ろ盾にある北朝鮮と自由主義陣営に在る韓国は当然元々同じ民族。体裁上「敵国」としているにも内情には様々な双方の都合がある。
しかし韓国としても北の核保有は世界のどこより関心が強くならざるを得ない。果たしてその確認の為には労を厭わない。本作品はそんな緊張関係下で「過去最も成功した諜報活動」とされている実在の「黒金星」のエピソードだ。
まず冒頭から荒っぽく始まり「商人として振る舞う軍人」の任務をパク・ソギョンが課せられる。簡単に言えば「金があり利用価値の高い人物」と北側に思わせ、できるだけ最深部に入り込み核保有の有無を探る事が使命。
この映画はやはり事実に基づくため、特に派手なアクションシーンがないにも関わらず。冒頭から最後まで張り詰めた緊張感が途切れない。10分も経過する頃にはパクが他人とは思えなくなってくる。
配役も抜群だ。
北の対経済委員会所長リ・ミョンウンは祖国の安穏を常に願いながらも肺腑を貫くような瞳をサングラスから放つ人物。
そして野心もあるし決して相手に心を許さず「疑念」から物事を進める北の国家安全保衛部・課長チョン・ムテク。
パクが純粋に任務を遂行しようとするなかで、国家と国家安全企画部の変動する都合で無理な追加任務を課す上司に国家安全企画部・室長チェ・ハクソン。これらの人物が核となり、韓国、北京、北朝鮮を舞台にひとときも我々を安堵させることなく、物語は進んでいく、が故にラストシーンで我々は流れ出る涙を止める事が出来ない──
この物語に流れるメッセージとしては「“国”と言っても所詮は人間達が織りなす存在である」ことと、両民族にとって幸福安穏の結論は「南北統一」なのだと言うことだろう。
我々日本人は在日の彼らが、元は同じ「朝鮮人」であった所を冷戦の都合が出身地によって北と南にわかれ、日本での生活に格差さえ生んでしまっていることを、最低限意識として持っているべきだろう。