けーすけ

エンテベ空港の7日間のけーすけのレビュー・感想・評価

エンテベ空港の7日間(2018年製作の映画)
3.3
2020/11/6(金) TSUTAYA DISCAS定額レンタルにて鑑賞。

1976年に起きたエールフランス139便ハイジャック事件にまつわる1週間を描いたお話。“一部の脚色を除き、本作は事実に基づいている”との事で。
この事件に関しては40年以上前に3度も映画化されているようですが、そちらは未見。本作でこの事件の事を知りました。


ドイツ人テロリストのヴィルフリード・ボーゼ(ダニエル・ブリュール)、同じくドイツ人の女性テロリスト、ブリギッテ・クールマン(ロザムンド・パイク)を中心として映してはいますが、こいつが主人公!といった明確な見せ方ではなく、人質となった乗客や乗務員、イスラエルの政治家や救出作戦にあたった兵士たちそれぞれにフォーカスしております。


尚、僕は世界地理&歴史が超苦手でして、、、(なんせ中学生の頃はテストで1桁代の点数を取ったくらい)。ストーリーについていくのが結構大変でした…。
本作でも冒頭でイスラエルやパレスチナの関係について説明はありましたが、余裕があれば時代背景含めて事前に調べておくとそれぞれの登場人物の関係性がわかりやすいと思います。




序盤にコンテンポラリーダンスの舞台シーンから始まり、途中や終盤でもこのダンスシーンが差し込まれるのですが、かなり好みが分かれそうなところ。
調べたところ、イスラエルでは有名なバットシェバ舞踊団の「エハッド・ミ・ヨデア」という演目だそう。個人的には色々なメタファーがあるように感じたのと、音楽がとても印象的かつ効果的で好きな演出でした。

そしてダンサーの一人の女性が、後に救出作戦で敵地に突入する兵士の恋人という繋がり(このあたりが大きな脚色と思っております)。
そんな彼女は舞台でとても重要な役に選ばれた、しかし上演日に彼は作戦で彼女の舞台を観に行く事はできないという、、、。
もう、なんだかフラグがビンビンですよね…。鑑賞中はあれこれ想像して少し苦しかった(結末は是非映画で見届けてください)。




最初にハイジャックをした犯行グループの一人、ヴィルフリード・ボーゼ。やっている事はとても卑劣で恐ろしい事だけど、実のところ人を殺したりする勇気はない気弱な人物として描かれています。
本当は人質は殺したりするつもりもなく、要求した親パレスチナ過激派の囚人などの解放にイスラエル政府が応じると思っていた。

ところが現地ウガンダでの犯行グループ仲間はイスラエル人を選別し「要求に応じない場合は子供から殺していく」という過激っぷり。
「こんなはずじゃなかった…」と苦悩するボーゼ。そんな彼を見て声をかける人質でもある航空機関士のジャック・ルモワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)の言葉と佇まいがとても印象的でした。


テロリストを肯定する事はできないけど、理想の革命と現実の狭間で揺れ動くさまを切り取る部分は興味深かったです。
しかしながら、それぞれの立場の視点を常に俯瞰的に映し出したゆえ、全体的に散漫になっている感だったのが残念なところ。



こういった事件があった事と、当時の情勢を知るという点ではとても良い映画だったと感じた作品。
“当時の”とはいってもイスラエル・パレスチナに関わる情勢問題は現在進行形なので、これを機にきちんと学ぼうと思います。


[2020-167]
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