アキラナウェイ

エンテベ空港の7日間のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

エンテベ空港の7日間(2018年製作の映画)
3.0
「プライベート・ウォー」に続き、「秋のパイク祭り」!!
ロザムンド・パイクがまたまたやってくれました。
カメレオンぶりが凄い!!

1976年6月27日。
イスラエル人が多数乗るエールフランス139便がハイジャックされる。ハイジャック犯は「パレスチナ解放人民戦線・外部司令部」(通称PFLP-EO)のメンバー2名と西ドイツのテロリストグループ「革命細胞」(Revolutionäre Zellen、略称RZ)のメンバー2名。彼らが向かった先はウガンダのエンテベ空港。イスラエル特殊部隊が「サンダーボルト作戦」を遂行し、102名の人質を救出するまでの7日間を描く。

物語の背景にあるパレスチナ問題への理解が必要で、かつハイジャックの実行犯であるパレスチナ解放人民戦線・外部司令と革命細胞、それぞれへの理解もまた必要か。

現代日本で暮らす我々にとっては、何とも飲み込み辛いテーマだなこれ!!

おまけに、謎のコンテンポラリー・ダンスよ。

観賞後も脳内リピートが止まらない。
衝撃的な音、歌、ダンス。

監督よ。何故これを入れた?

いざ作戦決行、という重要なシークエンスで、挟み込まれる謎のダンスが確実にノイズになってしまい、非常に勿体ない。

「お願い!きちんと事件の全貌を見せて!」と何度も叫びたくなった。スリリングな展開をわざわざぶつ切りにしてまで、何故ダンスを挟む!?

仕舞いにはエンドロールまで謎のダンスで締めようとする始末。「何を見せられているんだ」感が半端ないし、監督の正気を疑う。

西ドイツ側のテロリストを演じたダニエル・ブリュール、ロザムンド・パイク、イスラエル国防相を演じたエディ・マーサンと、キャスティングは良いものの、テロリスト側とイスラエル側、それぞれの思惑を十分には描き切っておらず、散漫な印象が残る。

というのも、テロリスト側は異なる2つの組織から成り、時間の経過と共に混乱が見られたり、イスラエル側は首相と国防相との政治的駆け引きが根底にあったりと、描くべき人間ドラマとしての構成は興味深いものがあるのに、描写が不十分でどうも全体的に腹落ちしにくい。

普段、穏やかな表情でバイプレイヤーとしては大好きなエディ・マーサンがいつになく切れ者を演じていたのは良かった。

やはり謎がアート作品としての奇抜さを醸し過ぎていて、それを受け入れられるかどうかで、作品の評価は変わりそう。

しかしまぁ、ロザムンド・パイクによる、目チガラ演技が今回も素晴らしい。

極限まで瞬きをしない、見開いたその目で延々と語られる公衆電話のシーンが、そのオチも含めて鬼気迫るものがあった。

人質の1人である機関士の男が語った「エンジニア1人の方が、革命家50人より役に立つ」という言葉が心に響く。

志の異なる者の犠牲の上でしか成り立たない「革命」とやらが、この世の中で1番信用出来ないし、機関士の言葉を借りれば何の役にも立たないんだな。