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オーバーボードのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

オーバーボード(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

3人の子どもを1人で育てながら必死に働くケイトは、大富豪の御曹司レオナルドの船の清掃を担当する。しかし傲慢なレオナルドは不当な理由でケイトを解雇し、給料の支払いも拒否。だが、その後レオナルドは船から転落して記憶喪失に。ケイトは給料を取り戻すべく、レオナルドに自分達は夫婦だと嘘をつき、彼を働かせるが…。

海に落ちて、記憶喪失となった金持ちが、慣れない庶民の暮らしにアタフタ…。
どこかで見た話だと思っていたら、1987年のコメディ「潮風のいたずら」のリメイクだった。
なるほど、元のレシピが良く、上手にアレンジされた料理のようだ。
記憶を失った大富豪とシングルマザーの奇妙な恋の行方を描いたロマンティック・コメディの秀作である。

80年代のオリジナルは富豪令嬢と大工の男で、男女の役柄が逆だった。
思えば、高慢な金持ち女を自分に従わせるような男性目線の征服願望があった訳で、今の時代はそんな女性蔑視表現はできるはずもない。
時代は変わり、女性は強くなった。
シングルマザーは今や当たり前であるし、現実的。
また、オリジナルの難点であった「子どもを産んだ覚えが無い女性」より、「作った覚えが無い男性」にしたため納得できる設定になった。
そして、現在は格差社会ゆえに、傲慢で偉そうな男を屈服させる方が面白い訳だ。
その点で、この役割の逆転は良いアイデアである。

生まれつきのセレブで、全く働いたことのないレオナルド。
そんな彼が肉体労働をし、ケイトと娘たちの食事まで作るハメになる。
当然、失敗ばかりなのが情けなくて笑えると同時に、家事を女性に任せっきりの世の中の旦那に対する皮肉が込められている。

序盤はケイトの嘘がいつバレるのか?にハラハラするが、思いやりのなかったレオナルドが肉体労働者の世界にふれ、労働の喜びを知る。
また、子供たちと触れ合ううちに父性に目覚めてゆく。
いつの間にかケイトより料理が上手くなったり、子供たちの心を掴んでゆくところが面白い。
白紙の状態の人間の本性は善であり、環境が人間を作るのだ、と性善説を唱えているのが微笑ましい。

初対面こそ、どうしようもない最低のクズだと思っていたレオナルドの変化に、ケイト自身も心惹かれてゆき、遂には結ばれる。
彼自身もかつてのクズな暮らしを反省したのだろう。
大富豪だった記憶を取り戻しても、レオナルドは「金より愛だ」と、ケイトの家族を選ぶハッピーエンドだ。

脇役もキャラクターが立っており、リアリティがあるが控えめな演技で、主役2人のオーバーアクトを目立たせる。
2人のドタバタぶりを周りが暖かく見守っている印象だ。

残念なのは主演の2人にオリジナルの主演であるゴールディ・ホーンやカート・ラッセルほど華がないことだろう。
ケイト役のアンナ・ファリスはキュートで健闘しているが、レオナルド役のエウヘニオ・デルベスは、高級スーツが似合うほどの気品がないのがどうしても気になる。

ともあれ、ラブストーリーとしてもファミリー向けコメディとしても楽しめる、とても気持ちの良い一作だ。
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