茶一郎

WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々の茶一郎のレビュー・感想・評価

3.7
『 ウィンウィンウィン ウィンウィン 』

 ランニングをしていると後ろから追い抜かれる。画面の端にぽつねんとたたずむ主人公。何とも人生の行き詰まりを感じるビジュアル。画面いっぱいに映るのは本作のタイトル、原題は「WIN WIN」。
 
 昨今、相互に徳をする関係を『win-winな関係』などと耳にするが、主人公の『何だか上手くいかない』感じは『LOSE』濃厚な気がしてくる。

サエない弁護士の主人公は、お金がないからといって、業者を呼ばずにトイレの水詰まりを自分で直そうとする。家では強気な妻から何かと口うるさく言われている。
この主人公がおじいちゃんの後見人となり、邦題の『ダメ少年』にあたる家出中学生と出会い、レスリングを通じて交流することで人生の風向きが少しづつ変わっていく。
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 『弁護士』と『レスリング』という組み合わせが新鮮だが、ダイアログの愉快さ、会話のテンポ感、キャラクター一人一人がこの映画に欠かせない存在に見えてくる役者のアンサンブルが魅力的だった。
トーマス・マッカーシーの真面目さが、渋い題材とマッチしている。もちろん、製作のFOX・サーチライト・ピクチャーズは秀作ぞろい。

 ふと善良な道から外れた主人公を決して甘やかさないストーリーだが、切ないラストはこれが第二の人生のスタートにも見えてくる。
結局、何が『WIN WIN』なのか。
人との出会い、他者との接し合い、何とも言えるが、結果的に主人公同様、今の自分は『total WIN』だと思える優しい作品だった。
茶一郎

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