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ルイスと不思議の時計のLCのレビュー・感想・評価

ルイスと不思議の時計(2018年製作の映画)
3.9
面白かった!

不気味さもお茶目さも不思議さも可愛さも丁度良くて、大変私が好きな感じ。
全然怖くねえしオチもわかるしと、物足りなさや子供騙し感を抱く人もいるかもしれない。でも私には丁度良い。

クレジット画面に入ってすぐ「製作時に傷付いたイスや植木はいません」て出るところでトドメを刺された。ハートをぐさっと。
本作のお茶目さと優しさが詰まっていて心底好き。
そう、本作は一貫してお茶目であり優しい。得体の知れない不気味さや血の通わない相手との対峙も、お茶目を感じるところもあれば、優しさを感じるところもある。優しく人を思いやる、その気持ち故に臆病になったり、その気持ちを強さに変えたりする。

作中で印象的に使われていたindomitable という言葉も、頭の中に広がる景色があって良い。
ラテン語の dominus が、構造的には「家に属する者」を表し、「所有者、主人」という意味で使われる。そして、「支配者」という意味も含み、ここまで来ればピンとくるだろうが、「神」という意味で使われることもある。『 Sanctus sanctus dominus 』という歌詞は聴いたことのある人も多いのではないだろうか。天使にラブソングをで楽しそうにシスターたちが歌っていたね (sanctus は、英語にすると holy )。
さて、本題の indomitable だ。この言葉はつまり「神に支配されることを拒む」性質を表現するのかなと想像できたら、本作のキャラクター関係図が少し楽しくなると思う。
少年は不幸にも両親を失った為に、ある家へ来た。その家の主人は、前の主人のことを話してくれる。
この家は、主人という立場の人が少なくとも2人属していたんだね。そして、少年は2人のどちらに対しても支配されない描写がされる。
たった1つのルールを守ってくれと言う神と、世界を変えたい神。

しかし、世界は神と少年、つまり男性だけでは成り立たないんだね。
本作は2人の神と共に、それぞれ頼もしい女性が活躍する。彼女たちは、女神だったのかもしれない。この2組の神々の間で不安気に揺れる少年という構図が地味に上手い。
神は女神抜きでは己の使命を達成できない。そしてもちろん、少年だって世界の構成員だ、彼なしでもまた、使命の達成は望めない。
でも、しっかりヒヤヒヤする。大丈夫かなあ。ちょっと頼りないかなあ。
だからこそ、目が離せなくて楽しいんだよね。

イスさんは本当すぐ好きになってしまった、かわいすぎる。
そして大きなネコさんよ、豪快過ぎてなんかもう4周くらい気持ちを回転させて「せやな!豪快でなんぼや!」と思っちゃったの絶対魔術でしょう。いつ解けるのかな。解けなくてもいいけれどさ。
たまにはココアを飲むのも良い。バンホーテンにしよう。
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