たか

樺太 1945年 夏 氷雪の門のたかのレビュー・感想・評価

樺太 1945年 夏 氷雪の門(1974年製作の映画)
5.0
 実は1974年に創られた作品なのですが、当時はソ連の圧力で殆ど上映できなかったそうです。その36年後の今年、やっと陽の目を見る事になりました。
 今になって全国上映ができる程の力を持った作品です。さすがに大作でした。しかも古い作品が故に、訴える力も強く、何か底知れぬ強さを感じました。
 題材は終戦直後にあった『真岡郵便電信局事件』です。女性電話交換手9人をメインとした物語です。「みなさん、これが最後です。さようなら、さようなら」と言うセリフ、どこかで聴いた事があったのですが、これだったんですね。
 一番強く感じたのが、人間関係が素晴らしい事です。実際はどうだったかわかりませんが、シンプルでお互いを尊重して、決して私利に走りません。こんな人達に囲まれて暮らしたい...そう思わされました。
 ポツダム宣言受諾後に侵攻してきたソ連による無差別銃殺シーン、とても生々しく切ないものでした。強姦の事実もあったそうですが、それに関しては描かれてませんでした。
 この作品は女性電話交換手に焦点を当てた素晴らしいものですが、樺太で起きた悲劇の一つでしかありません。そこを理解しないと、ソ連=加害者、日本=被害者で終わってしまう恐れはあります。
 日露戦争でソ連が樺太南部を失っている事実、今でも『在樺コリアン問題』が残っている事実、当時日本人による『樺太朝鮮人虐殺事件』があったと言う証言など、この時代の樺太も簡単には見えて来ないですね。
 最後に印象的だった言葉をもう一つ、女性電話交換手が言った「ここ(樺太)で生まれ、ここ(樺太)で育ったから、樺太を離れたくない。」です。日露戦争終結~太平洋戦争終盤って、歴史的にはそれほど長く感じないのですが、その期間にも、多くの人が生まれ育ってるんですね。当たり前の事なのですが、(樺太と絡めると)何か不思議な感覚を覚える言葉でした。
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