シネマスナイパーF

ニンジャバットマンのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

ニンジャバットマン(2018年製作の映画)
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既存のコンテンツを自分達の「お国柄」「お家芸」の中に打ち込み、セルアニメーションが大きな主流である日本というものをもメタフィクション的に取り込み、そして最後には借りたコンテンツを完全に飲み込んでしまおうというトップクリエイター達の野心を見せつけられる作品

良くも悪くも日本人にしか作れないものを作ったことに間違いはない
そして、その中でも悪い部分が大きく目立つのも間違いない
その悪い部分の日本人らしさに乗れるかどうかが分かれ目だと思います
僕も正直途中までは乗れませんでしたが、ラストのラストで納得させられましたよ
キャットウーマンが答え出してくれました


フィクションラインの徹底のお手本
観ていれば分かるんですが、基本的に空が青海波と呼ばれる和柄の模様になっているんですよ
地の部分から作り話前提なので、何が起こっても、とりあえずコレはそういうもんですよっていうのは徹底している
だから乗れるか乗れないかが問題になります

確かに、脚本として面白いかと言われれば、少なくとも過剰に持ち上げるほど面白くはねぇー!悪ノリと言っても流石に滅茶苦茶すぎるし、ジョーカーとゴリラ以外のヴィランが空気だし、部分部分での溜めが正直足りなさすぎて上手くないしテンションあまり上がらない
ただ、日本人の好きなツボは頑張って抑えますよっていう気概はビンビン
初っ端からヒーローは遅れてやってくるんですからね
何よりも一番気を引く部分は「見得を切る」ことを大事にしている心で、溜めが感じられず上手くないとは言ったものの、クライマックス、ついにタイトルの通りのヒーローが現れた、その瞬間の快感は筆舌しがたいものがある


一から十まで悪ノリ全開と切ってしまうのもオススメする上では良い文言だとは思うんですが、ただ悪ノリで悪ノリ映画作っても、なんか半端なオフザケ観せられただけだったなという印象しか残らないと思うので、この作品の場合、悪ノリだとか滅茶苦茶だとか、そういう印象だけが残るわけではないということを伝えたい
何が言いたいかっていうと、大真面目なんですよ、オフザケなのに
ごめん俺たちコレでも本気なんですってのがビンッビンに伝わるんですよ

情報遮断して観に行った人なら驚くであろう富士山の麓での展開も、どれだけマイルドに言ってあげてもアホとしか言えないんですが、日本人を少しばかり小馬鹿にする日本人のオフザケって言えば分かりますかね…猿が束になって西洋人を助ける展開は、場の状況と合わせて憎い演出だと思う

日本という「地元」の建造物、風景、そして人間や犬は、CG主要キャラクター達とは違う、所謂セルアニメーションで描かれていて、セルアニメーションの中にCGアニメーションを投げ入れることによる異物表現でもありながら、海外コンテンツとしてのバットマンと日本のアニメーションとの間の、ある種の差別化にも繋がっている
そしてその結末がラストのキャットウーマンであり、それを目撃した僕は拍手するのみでした


脚本家や豪華すぎる声優陣も素晴らしい仕事をしましたが、やはりMVPは神風動画で間違いないでしょう
「妥協は死」の社訓に嘘偽りなしで、とにかくよく動き派手で魅力的


ただバットマンを借りて滅茶苦茶やるだけではなく、その先まで辿り着いてやるという気概が結晶した本気オブ本気クオリティ
目を瞑れない程の話の雑さは確かに擁護しにくいですが、結局日本人はこのレベルの凄い作品を作ったとしても意地でもリップシンクはしないんだなと笑わせてくれるぐらいには作り手の意地が見えました

僕的には大傑作
今年イチはコレで間違いない