なっこ

かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―のなっこのレビュー・感想・評価

3.4
鉄道、好きです。鉄道映画というジャンルがあるかどうか意識したことはなかったけれど、電車や駅が出てくる映画にハズレはないように思います。

人生は鉄道の旅によく似ている。乗り物の中でも電車は特別。作品の舞台となるおれんじ鉄道は一両編成の可愛らしい電車が走る私鉄。単線で地方の野山を走り回っている電車はなんだか応援したくなる。

家族の再出発を描いた本作は、始めから終わりまで全く無駄のないシーンの積み重ねで、2時間近いのに全く長さを感じさせなかった。そして配役が見事。好きな俳優さんばかり。

息子を亡くした父と、夫を亡くした嫁と、前妻の子ども。祖父と孫はそれまで会ったこともなかった。ひとりの死によって簡単にバラバラになってしまう家族。ひとつの死によって全く違う方向に進み始めた家族の物語。それでも、この家族をひとつにするのは、“修平”という息子であり、夫であり、父であるひとりの男なのだと思った。もう居ないその人との確かな絆がその後のシーンで語られていく。

電車は乗る人の人生も乗せて走っている。“修平”はそんな電車のようなおおらかさのある男。誰かと家族でいられる時間も、電車に乗っている時間のようにある限られた時間でしかないのかもしれない。いつまでも一緒に乗っていられるわけじゃない。別々の電車に乗らなきゃいけないことも途中下車を強いられることだってあるだろう。だからこそ、一緒に居られる時間を大切にしなきゃいけないのだと思う。一緒にいるから家族になっていくのだと思う。

人生は鉄道の旅に似てる。長いトンネルに入っていつ明るいところに出ることが出来るのか分からなくて不安になることもあるけれど。線路は続くよどこまでも。レールはつながっている、未来へと。そんな明るくあたたかな気持ちになるラストシーンにとても勇気付けられました。
なっこ

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