虹島流浮

カメラが捉えたキューバの虹島流浮のレビュー・感想・評価

カメラが捉えたキューバ(2017年製作の映画)
4.8
「寿命が来る前に死ぬものはいない。いつかは知らないがね。」とフィデル・カストロ。
「死んだら貧富は関係ない。問題はどう生きたかだ。」と老3兄弟のうちの1人。
「人生は空しい。徐々にすり減っていくだけ。生まれた時はみんなとても幸せ。でも結局1人になる。」と老3兄弟に先立たれた妹。
ゲバラはこう言った、「未来のために今を耐えるのではなく、未来のために今を楽しく生きるのだ。」
社会主義には良い面も悪い面もある。一人一人の生き方を直接左右するため致し方ない。それが政治に共通するもの。学費、医療費が無料はありがたいが、物資、食べ物の輸入が制限されているため苦しさも並行している。
革命後、自由になり歓喜する者。ソ連崩壊後、自由を求めてアメリカに亡命する者。アメリカから帰国する者を拒否する者。フィデルを敬愛する者、独裁とみなす者。
70年代からフィデル・カストロが亡くなる2016年まで、そしてその後のキューバを、それぞれの社会情勢によって変遷する国民の姿を通して描くことによって、キューバと人々に愛と哀しみを抱いてしまう構成はドキュメンタリーとしての質がかなり高い。アメリカという国籍をもつ監督が自ら乗り込んで制作してるのがいいんですよね。
ニコッと笑うフィデルと急に真剣になるフィデル、気の利いた発言、この人柄が人を惹きつける。
陽気な国民、怒る国民、ありのままのキューバをまるっと詰め込んだ貴重な映像の数々。
日本でも教材として学校で見せていただきたい。自分の国と生き方を考えるきっかけになるのではなかろうか。
変化を受け入れたり拒んだり、我慢したり主張したり、それらは難しい時もあるけれど、古い伝統に捉われがちな日本には足りないものがこの映画にはあった。もちろんキューバになくて日本にあるものもある。でも足りないもののために立ち止まる必要はなく、今を楽しみたければ自分で未来を切り開けばいい、それを実践できる者がこの地球という人類共通住居で生きていける。
キューバには曖昧な人がいなくて、意見をしっかり持っているし、亡くなったフィデルに対して小さい子が涙しているのが印象的であった。
インドの次はキューバに行かなければならない。近いうちに必ず。