いのしん

記憶の夜のいのしんのネタバレレビュー・内容・結末

記憶の夜(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

1997年、21歳のジンソク(カン・ハヌル)は家族と共に新しい家に引っ越してくるが、見覚えのある家、開かずの間から響く音、毎晩外出する兄・ユソク(キム・ムヨル)に日に日に疑問と不信感を抱くようになる。ある雨の夜、ユソクが誘拐され、19日後に戻ってきた彼の不自然さから、別人だと母(ナ・ヨンヒ)に相談するが、母の電話を盗み聞きしたジンソクは、一家共犯で自分を捕らえているのだと知り、交番に駆け込む。警察官との会話の中で、自分は41歳であること、今は2017年であることを知り、鏡に映る自分の顔がその事実を物語っていた。
ここで家族からジンソクへの説明シーンとなり、視聴者にネタバラシされる構成となる。ジンソクは20年前の1997年にある家族の母娘を殺した容疑があること。その事件は時効になったが遺族が今でも犯人を探していてジンソクを突き止めたこと。問いただしても自白しないため記憶を消している可能性があること。ジンソクに催眠術をかけ家族として監視する中で、当時と同じ場所・現場・天気を再現し、同じシチュエーションを経験させることで殺人の記憶を呼び覚まさせ、自白させようとしたこと。
殺されると感じたジンソクは走行中の車から飛び出して逃げ出すが、走って逃げた先で車にはねられ病院で目を覚ます。その衝撃からか、自ら消していた記憶が蘇る。自分は確かに殺人を起こしたこと。それは当時の交通事故で入院していた本当の兄の手術費が必要で、ネットのコミュニティで見知らぬ人から頼まれたものであったこと。その依頼人が兄の担当医で、殺したのがその担当医の家族だったこと。唯一の遺族が当時5歳だった男の子で、今自分を追い詰めているユソクだったということ。
ユソクは、なぜ自分の家族を殺したのかジンソクに問いただすが、依頼人が彼の父親でその父親が家族を殺害しようと企てていた事実をジンソクは口にすることが出来ず、全て自分一人でやったと嘘をつく。残されたユソクとジンソクは、それぞれ自分の命を絶ち、物語は幕を閉じる。
作品として非常に良かった。ジンソクと兄の関係性を疑う引越し業者の発言、開かずの間から聞こえる音などの序盤の伏線を後半で見事に回収しているところ。ジンソクがした不可解な経験は、全て神経症を患っている彼の幻覚、もしくは夢なのではないかと視聴者に思わせる構成。家族側の作戦が必ずしも順調ではなく、途中でユソクが警察に囚われ、警察を買収するという手間が発生したアクシデントをストーリーにあえて入れるところ。全てが良くできた作りであり、練られた脚本だなと関心する。ホラーやサスペンスは得意ではないが、このようなどんでん返しがあり、きれいに伏線が回収され、見終わった後に納得できるような作品は好みである。