ムビ太郎

千と千尋の神隠しのムビ太郎のレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
4.8
大切なものとは、他ならぬ自分であること。

転校が決まった千尋。マンションが建てられて居場所を失った川の産土神であるハク。両者そもそものスタートが「自分の居場所を求める」状態にあった。
千尋に降りかかるのは名前の剥奪、家族との別れ、そして過去の人間としての記憶の喪失。その全てを取り戻すものは、愛であり心だった。立派な物でも、金でもない。一人一人が自分の手で編んで来た物こそが自分を形作る。

ハクも建築という人間的な行為より川が埋められ、自分を失った。そしてその自分を埋める為に受け入れてくれる油屋という世界に辿り着き、空っぽであるが故に湯婆婆にいいように操られてしまった。そして銭婆を巻き込む悪さを働いてしまう。 
カオナシ。良くも悪くも"ニュートラル"な存在であり、個性がない。そもそも持ち合わせる自分は無く、なんとなく理由もない感覚で千尋に寄ってくる。次第に千尋が油屋の従業員や湯婆婆に認められてくると、自分の居場所であった千尋が他の存在に奪われるような気がして、暴走を始めてしまう。
坊も、あの湯婆婆に従っていたカラスみたいな鳥もそうなのである。魔法は解けているはずだけど、自分はこの姿が良い。「外には危険がいっぱいで、病気になっちゃうんだぞ。」その考えに、自分は介在しない。実際に自分が体験しなければ、自分は創られない。逆に言えば、自分で体験して初めて自分の力として自分を形作る。初めて外の世界を体験した坊がすぐに立ってしまうのだから。

自分を見失わないこと。自分の居場所を自分で見つけること。自分の手で物事を行うこと。全てが繋がっていて見落とされてしまいがちなもの。 自分の好きな事や、個性を本当に大切にしていきたい。特に今のような世の中では。
ムビ太郎

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