RitO

スパイダーマン:スパイダーバースのRitOのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

この作品の素晴らしい点は数多くあるが、何よりもコミックを意識した映像表現が挙げられるだろう。
印刷ズレを再現した色彩豊かなエフェクトや、トーンのようなドットパターン、フキダシや擬音など、他の作品では見ることが出来ないような映像が沢山盛り込まれていて、心を奪われる。また演出面でも、キャラクター紹介の際に漫画雑誌そのものを映したり、コミックのコマ割り描写が用いられるのも観ていて楽しい。

ストーリー面では、テーマの一つとして「自分で選択すること」というものが存在している。クモに噛まれたことで否応なしに能力を獲得してしまったマイルスが、父親やピーター・B・パーカーの言葉を受け、自らの意志でスパイダーマンになることを選択するまでの流れは、非常に綺麗だし観客に勇気を与える物語になっていたと思う。
前半でマイルスが描くグラフィティには、彼自身を取り囲うような白い輪郭線が描かれており、選択の余地、可能性が閉ざされてしまっている象徴として機能している。対照的にエピローグでは、父親の前で堂々とグラフィティを描いたり、各地にステッカーを貼るなど、可能性の広がりを感じさせるものになっている。

コミカル要素も非常に良く、掛け合いやギャグ、映像的な部分で思わずクスッとしてしまうところが多かった。これは、キャラクター自身が魅力的に描けていることも大きく貢献しているだろう。
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