何故だろう。
この作品を見た後、ぼんやりとした頭で街路を歩みながら、私は完璧さというものについて考える。
スパイダーマンという大きな物語を、初見の方にも目まぐるしいスペクタクルで満足させ、追いかけ続けた方にも耐えられるように様々な小ネタで飽きさせないように随所に工夫が凝らされている。
そうだ、この作品はスパイダーマンという作品群を巡る途方もないほどの工夫の賜物なのだ。
その努力は徹底的であればあるほど、その物語の中をひたすら充足させるのみであって、物語が自らを突き破る推進力はかえって喪われているようだ。
この作品は完璧だ。
ただし、だからこそ、物語る必要のないものでもあった。