みーちゃん

鋼鉄の雨のみーちゃんのレビュー・感想・評価

鋼鉄の雨(2017年製作の映画)
4.1
序盤の開城での式典のシーンが本当に怖かった。少女達のお揃いのピンクのアウターから、より一層凄惨さが伝わり、フィクションだと分かっていてもショックだった。MLRSという言葉ではピンとこないし、多連装ロケット砲なんて言葉でも具体的にはイメージできない。

でも、あのシーンを見て、少なくとも、この武器が持つ意味や用いられる目的、使ったらどうなるかを、観客というより、一市民として理解した。そしてあまりの恐怖に、すぐにはリアクションできなかった。

それと同じくらい接近戦も凄かった。例えば、振り向き様に相手の銃を奪うシーンは、どうすればあんなことが出来るのか、一時停止して確認したけど、チョン・ウソンの動きには1ミリも隙が無かった。また、チェ大尉が自分で自分の気道にチューブを入れるシーンは、同じ人間として信じられないけど、ただの思いつきの演出ではないリアルさがあった。

遠隔戦と接近戦、だけでなく、北と南、社会と個人など、これらの対比と焦点の合わせ方、緩急のつけ方が最初から最後まで見事だった。

そして、終盤は、静と動。それまでのアクションや怒涛の展開とは正反対に、ほぼ車の中で、何も起こらない二人だけの時間。そのかわり感情面の揺さぶりが半端ない。このシークエンスは、どんなに脚本が良くても、演出が上手くても、チョン・ウソンとクァク・ドウォンでなくては成り立たないと感じさせる一瞬一瞬だった。この気持ちを何と表現すればいいのか、私はまだ分からない。安易には涙も流せなかった。

政治的な話はさておき、ドラマの結末として、難しい決着をちゃんとつけたところも意義があったと思う。