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リビング ザ ゲームの小のレビュー・感想・評価

リビング ザ ゲーム(2016年製作の映画)
3.8
「ストリートファイターII」という日本のカプコンが1991年に発売した対戦型格闘テレビゲームの大会が世界各地で開催されていて、そこで獲得した賞金やゲーム関連企業などのスポンサーからの収入をベースに生活するプロゲーマーたちのドキュメンタリー。

プロゲーマーという職業について、噂では知っていたけれど、目の当たりにするのは初めて。凄い速さでコントローラーを操作し、相手の一瞬のスキを突くゲーマーたちの闘いは、ガンマンや侍の決闘に似ているのかもしれない。だからなのか、ゲームファンは彼らのプレイを大会会場やネット中継で観戦し熱狂する。

リアルにはなかなか味わうことができない緊張と興奮を体験できるうえ、やろうと思えば誰でも参加できる手軽さ。プロが登場するのは不思議ではないけれど、囲碁、将棋と比較した場合の麻雀のように社会的な関心は低く、場合によってはどことなく後ろめたいものであるのかもしれない。

プロゲーマーという職業がどのように成立し、プロたちはその職業をどのように考えているか、ということが観る前は気になっていたけれど、ゲームとは関係のない普遍的な人モノとして面白かった。

アメリカ、フランス、台湾といった世界の各地のプロゲーマーたちが紹介されているのだけれど(何故か皆、東洋系の顔立ち)、やはり面白いのは日本人2人の存在。

ラスベガスで毎年開催され、最も権威ある格闘ゲーム大会と言われている「EVO」で2度の続優勝を果たした梅原大吾。彼の闘い方は観る者を惹きつける。伝説の一戦は、あと1ダメージでも受ければ敗退という状況で、完全に回避することは人間には不可能と思われていた相手の連続技を、すべて防御してからの大逆転勝利。誰もが梅原の負けを確信していただけに、その熱狂は凄まじく、梅原はカリスマとなった。

一方、梅原に強いライバル心を燃やす「ももち」は職人肌。キャラクターを正確にコントロールするため、日夜訓練を欠かさない。その姿勢はとてもストイックで、同棲しているゲーマーの彼女に対する厳しい指導は、弟子を罵倒しているみたい。

ももちのプレイはミスが少なく安定していて、その闘い方は強い半面、派手さがない。勝つことで認めさせようという姿勢は人気につながらず、だからこそ、梅原を倒すしかない、みたいな。プロ野球で言えば、梅原が長嶋なら、ももちは野村(あるいは落合)という感じに見える。

あと印象に残ったのは、アメリカのプロゲーマーの言葉。アメリカのゲーマーはお金のためにゲームをするけれど、日本のゲーマーはプライドのためにゲームをしているという。確かに2人からはそういう雰囲気が強く感じられる。ももちに比べれば、ゲームを一歩引いて俯瞰して見ている印象を受ける梅原でさえ、ゲーム大会は賞金稼ぎではなく求道の場のようになっている。

真剣に取り組んでいるからこその、悩み、葛藤、そしてつかの間の歓喜。「ゲームなんて…」という軽視、偏見があったとしたら、きっと驚くに違いない。

もっとも個人的には、ゲームをプレイしなくなってからうん十年たっているせいか、ストリートファイターのバトルシーンにイマイチ入り込めないことが難点。動体視力が劣化しているからかな? 身体的制約もあり、オジサンのゲーム観戦はきついかもしれない。

●物語(50%×4.0):2.00
・人がしっかり描かれていて良かった。 

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・2人の日本人ゲーマー、それぞれにキャラが立っていた。

●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・ゲームの画面は動きが速くて…(苦笑)。
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