みなみ

劇場版ポケットモンスター みんなの物語のみなみのレビュー・感想・評価

2.8
 2023/11/5

「女子高生」が出るポケモン。
 ……何気凄いことではなかろうか。ポケモンと言えば10歳かそこらの夢と希望に溢れた少年少女が活躍するのが本筋のはずで、本作は真っ向からそれに対峙してきている。(女子高生が「ポケモン初心者」というのも狡い)

 女子高生。創作物の中では宛ら「幻獣」のような描き方をされているがよく考えてみれば女子高生は他の何よりも現実的な存在だ、というか女子高生ほど現実的な存在もない。

 この前仕事帰りに(唐突な語り)JKが軽薄なテレビ番組(ひょっとしたら10年後死滅しているであろうyoutuberかも)の街頭インタビューに晒されているのを目の後ろにしてしまい、「顔か性格か?」聞かれて(絶妙に一拍置いて)「……性格」と答えていて、「ああ、JKを演ずるのも大変だなあ」とか背後のモブキャラ労働者は思った(期せずして主役の背後を通り過ぎる通行人Bになってしまった)。

ネットとかだと「女は狡い」だとか「女性であることの特権」だとか鳥沙汰される印象もあるけれど彼女らも大変というか、色々と気を遣うというか、なんかそんな草臥れた(夢のない)存在を敢えてポケモン映画に出演させてくる本作。めちゃくちゃ捻くれている。
 
 他にもどこか疲弊した感じの受ける大人たちを多数出演、というか本作はポケモンには珍しく群像劇の体裁を取っている。意識高い系シリアス群像劇ポケモンといったところ。やはり2017年度から露骨に大人向け(少なくとも小学生向けではない)に切り替えている感じがある。ターゲット層を微妙にずらしてきているというか。

 取り敢えず、ポケモンと群像劇は致命的に合わないと言うことが分かった。(ゲーム的な意味でも主人公は一人の方がいい)
 ポケモンは恐らく人生で最も長期的に触れていてリアルタイムで変遷を負い続けているコンテンツなので、本作の苛烈とも言える挑戦には胸を打たれたというか、(良くも悪くも)印象的ではあった。でもやっぱ作風が合ってない感じがするなぁ。「ポケモン」が本来目指している指向性とは焦点が大幅にぶれてしまうというか。

 ラルゴの演技だけ熟れているというか凄いなと思ったが縁者を見て流石だなと感じた。冒頭で言及したJKリサはポケモンをメタ的に定義するキャラとしては面白かったかも。

 しかし、解決すべき問題が事故にも近い自然災害というのはどうか。ゼラオラ空気だし。面白いかどうかは別として、本当にポケモンらしくない作品であったなとは思う。斬新だ。
みなみ

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