RenAlLotus

名探偵ピカチュウのRenAlLotusのネタバレレビュー・内容・結末

名探偵ピカチュウ(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

僕はこれかなり好きですよ。
なんだろう、まあ欠点から言うと、間が悪かった(構成が下手)とかはあるかな

たとえば最初の方のカラカラ捕まえるシーンだったり、くそでかドダイトスの上でてんやわんやするシーンだったり、

確かにゲームとの連続性をアピールしたいとか絵的に派手にしたいみたいなのはあったのかもしれないけど、正直だれてたし、他に時間割くべきところあったと思う。

結末に向かって謎が解けていくあたりはちょっと駆け足すぎたというか、推理の展開にもっと時間使うか、あるいはもう少し簡略化するべきだったなと思うし。

ハワードの方から突然父親の話を切り出すとことか、ロジャーじゃなくハワードが黒幕だったとかも、もっと他にうまい見せようはあったかなって

あとまあ、他の人が言ってるような細かいツメの甘さとかはあっただろうね。そんなに覚えてないけど

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さて!そしたらここからは良いところを言うんだけど、まず、ストーリーに辻褄の合わない部分がほとんどなかった。

これは割と評価してて、まあご都合主義もないわけじゃないけど、(ドダイトスの件のあとでピカチュウ連れてったらミュウツーいた!とか)
推理の過程で嘘をついてないのは好感持てたなって感じ。
まあそれは俺がもともとそこに期待してなかったからかも?

とか、原作ゲームでは触れられなかった「ピカチュウが喋った理由」と「父親の行方」にうまく説明をつけていたのが非常によかったと思う。
いや、もしかしたら最初からこうするつもりでわざとゲーム版は尻切れトンボにしたのかもしれないけどね ちくしょう

それと、すごいのが、「ゲーム第1世代〜第7世代」「アニメ」「劇場版」「ポケモンGO」「ゲーム版名探偵ピカチュウ」の全ての要素が盛り込まれてること。

そういう、もともと離れていた世界観のミッシングリンクになってるっていう意味でも、なんだろう、貴重な作品だなと思う。

最後のバルーンがたくさん浮かんでるシーンも、おれ感動しちゃって、バルーンは映画内のリアルなCGを元にしたデザインじゃなくて、今までのアニメとかグッズっぽいデザインだったじゃんか。

てことは、我々が犬や猫のイラストを描くみたいに、ポケモン世界の人間には「実際には生々しいポケモンたちをデフォルメしてキャラクター化する」という文化があるってことで、
そしてそのデフォルメの結果というのが今まで我々の目にしてきたアニメ版のデザインなんだ!という、

そう考えると逆にアニメやゲームに出てくるピカチュウもほんとはモフモフなのを省略してるんだろうな〜とか、

サトシも実際にああいう見た目なわけじゃなくて、ほんとはこの映画と同じように"実写"の、そこらへん歩いてる普通の人間の少年と変わらない姿ってことかな!?とか、


つまり、あのバルーンの演出ひとつで、おれはポケモンの全作品を「おやすみプンプン」読むときくらいのメタな目線で見られるようになっちゃったわけよ。

竹内涼真が着てたレッドみたいな服装もポケモンGOに出てくる服装も同じポケモン世界に実在するファッションとして受け取れるようになったし。

たとえばさ、ゲーム版のポケモンでは主人公の服が汚れることってないけど、それはゲームの都合であって、
実際にポケモン世界では何をしても汚れない服が出回ってるんだ!って解釈する人いないじゃん?

つまり、少なからず脳内でリアリティを補完してる部分があったと思うんだけど、

いま!!!この映画があらゆるポケモン作品のリアリティ最高値になって、要は基準になっちゃったから、これから他になにを見ても

「実際はモフモフなんだよな」
「実際は我々と同じ姿をした生の人間なんだよな」
「実際のピカチュウの鳴き声は『ピカピカ』で、コダックの鳴き声は『サイダック』だから、元のゲーム版の"なきごえ"は表現のあやなんだよな」
「草むら歩いてたらポケモンが飛び出してくる!ってよりは実際はただそこにいて、でもウッカリ人間が近づいちゃうとヤバいってことなんだよな」

てな具合に、表現を受け取ったときに想像力で補完する範囲が「名探偵ピカチュウ」基準まで引き上げられちゃって、

今までフワッとアニメだなーゲームだなーくらいに思ってたものがよ、これからは全部おれの頭に入った瞬間もう自動的に実写と同じリアリティ・臨場感を持って突き刺さってくるようになっちゃったわけよ!!!!!

過去のモンハン作品→モンハンワールド もそうなんだけど、
この「過去作・別媒体での表現をメタレベルで底上げする」というのができるのは、
この映画を過去作品のパラレルワールドみたいにしちゃうんじゃなく、あくまでアニメやゲームと地続きの同じ世界で起こりうることとして、過去の設定やデザイン・世界観にリスペクトを持って描いてくれた制作側の技能とこだわり、作品愛のおかげなんです。

というわけで、この映画を鑑賞された皆様におかれましては!これからほかのポケモン作品に触れるときは!
線画やポリゴンの裏に、毛の1本が、細胞のひとつが、あらゆる質感が隠されているという想像力、「名探偵ピカチュウ」がくれた想像力を傍らに置いて楽しんでみてはいかがでしょうか!!!!!
RenAlLotus

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