映画好きの柴犬

志乃ちゃんは自分の名前が言えないの映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

4.0
 「惡の華」の押見修造原作による青春音楽映画。青春音楽映画と書くとキラキラした物語を想像するかも(ちょっとだけそういうシーンもある)だけど、全く逆で、それぞれに生き辛さを抱えた三人がもがき苦しむ姿がリアルに描写されて、心に刺さる。「聲の形」や「心が叫びたがってるんだ。」のようなアニメというオブラートに包まれてなくて、「惡の華」のようなメジャー作品の華やかさもない、インディーズ風の素朴で飾らない空気感のある演出。助けようとはしているものの、地雷踏みまくりの教師や親。三人がそれぞれ被害者でもありながら、加害者にもなるっていう、一筋縄でいかない現実を突きつけるほろ苦いエンディング。

 自分自身、歌が下手で音楽の授業とか本当に嫌いだったし、人と喋るのも苦手で自己紹介の順番待ちで緊張が高まっていく感じとかもすごく共感できるし、本当に全編が刺さりまくりだった。

 是枝作品の常連・蒔田彩珠とメジャー作品に多数出演している萩原利久に負けず、出演二作目にして瑞々しい歌声と圧巻の泣き演技を見せた南沙良に要注目。