けーすけ

響 -HIBIKI-のけーすけのレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
3.5
出版社に新人賞応募の小説が郵送で届いた。しかし応募はネットでの受付のみだった為、封筒ごと廃棄ボックスに入れられた。ところが、その封筒をたまたま手にした編集者の花井ふみ(北川景子)は何気なく読み、その圧倒的な内容に衝撃を受け、無理やり新人賞の応募作品にねじ込むという手段に出たのであった。封筒には「鮎喰 響」の名前のみの記載しかない。作者は一体何者なのか…。
その後、偶然にもふみの前に現れた響(平手友梨奈)は15歳という若き天才でありながらも、とんでもない性格の人間であった・・・






観たい~!と思いつつ、ついつい先延ばしにしてしまっていた本作、ようやく鑑賞できました。
前情報は「元欅坂46の不動のセンター、平手友梨奈が主演」だけだったのでタイトルの『響-HIBIKI-』という響きからホラーかサイコスリラーかと思ってました。笑



誰もを魅了する天才的な小説を書く響が主役という、ほんのりと小説バトル的な物語でホラーではなかったですが、ある意味ではサイコスリラーな映画かも。


響は15歳で高校生になったばかりで、自分の感じた事や思った事に対してはド直球で反応してしまう性格。先輩の指の骨は折るわ、学校の屋上からうっかり落っこちるわ(個人的に柵もない学校屋上のシーンには相変わらず辟易します…)、大ベテランの小説家にもタメ口、高名な小説家であろうがナイフで刺すより痛いであろう言葉で引導を突きつけるという傍若無人ぶり。


とある授賞式で同じく受賞者となった田中(柳楽優弥)に「お前(響)の作品なんて読まなくてもつまらないとわかる」と言われ、響が田中相手にバチボコに暴れた後、電車を待つ田中が立つホームの後ろに“スッ”と現れる響。ゾワゾワの怖さでした。ああ恐ろしい。


そんな響のハチャメチャっぷりに「おいおい、ここでは大人しくしておいてくれよ…」と観ている側が常にハラハラヒヤヒヤさせられるという見せ方、最高でした。



こういう書き方だと響が単純にヤバい奴と思われそうなのですが(いや、世の一般常識では十分にヤバい奴です)、彼女の中での信念が狂気&暴力的でありながら、殴られた相手すらを説得させる小説の才能を持ち合わせているというのが痛快で終始ワクワクできた部分です。

さらに響のまっすぐさは今のワイドショー的な世の中をも痛烈に皮肉っていて、響の暴力沙汰で世論の批判の声が出た時に「世間に謝罪しないと…」という流れに対し「本人には謝罪した。何で世の中に謝罪しなくちゃいけないの?」とバッサリ言い切った部分は気持ちよかったところ。


ただ、それだけぶっ飛んだ人格なのに、「響はどうしてそんな性格になったのか」「天才的な小説才能はどこから」といったバックボーンの描きが無かったのが説得力に欠ける部分で勿体なかったとも感じた点でした。
自宅では母親からの「買い物行ってきて~」のお願いに響が気軽に応じるシーンがあるだけに、娘の奔放さを放置している親って、、、という微ノイズが…。どうせなら『三月のライオン』の桐山零ばりに隔絶された人物像だった方がもっと感情移入できたかも。




あとは共演に出版社の担当を演じた北川景子や編集長役の高嶋政伸といった大物役者がいるのに響役の平手友梨奈を中心に動いていたのが印象的でもあります。
そんな中で、なかなか芽の出ない小説家の山本を演じた小栗旬も存在感は抜群!なのに絡みが少なすぎて悲しかった。見せ場はあるのに、完全にハンバーグステーキの付け合わせ的フライドポテト(皮付きのやつ)感。
美味しいのに、なんでそんな扱いなのよー!!涙



全体を通して面白いのだけど、平手友梨奈を中心にしすぎていてあと一歩という印象。とはいえ平手友梨奈の魅力と実力を存分に引き出した一作とは感じました。平手友梨奈の今後が楽しみ・・・(「平手友梨奈」というワードがかなり出てしまってるのが“どんだけ自分好きなんだよ”って感じで痛いですね…)。
『三角窓の外側は夜』『ザ・ファブル』(2作目)が控えており、そちらも期待大です。


2021/01/04(月) TSUTAYA DISCAS単品レンタルにて鑑賞。
[2021-002]
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