Arts0001

未来のミライのArts0001のレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
4.1
フィルモグラフィー的にありな作品

細田守作品でイメージする、サマーウォーズやバケモノの子、時をかける少女のような激しい盛り上がりや、派手な見せ場がある作品ではないものの。
今までになかった切り口ができている作品であり、ジンワリと感動がある良作だったと思います。

本作はくんちゃんという男の子の家に、赤ちゃんの未来ちゃんがやって来たことで、くんちゃんの中にある心の葛藤から、不思議な世界が展開されていくというお話。

その中で、中学生になった未来ちゃん、擬人化された飼い犬、お母さんの子供の頃やひいおじいちゃんの若い頃。などなど様々な時間軸、世界の人々との交流を通じて、くんちゃんが少しずつ成長をしていきます。

まずは生き生きとした子供の描写は流石です。実は私は同じくらいの年頃の父親なのですが、服を着せても下着がはみ出ているところや、指さきでモジモジするところ、駄々のこね方など、あの年頃の子供をよく観察して描写しているところに感心させられました。

そして共働き夫婦の子育てのやり取りもリアルな部分があって、なんだが映画館に来ているのに自宅にいるような複雑な気分になりました。それだけ家庭の描き方はしっかりしていたと思います。

そのリアルな世界からフィクションに移り変わる場面の唐突感が逆に良かったです。家の中に突然知らない人物が現れたり、景色が突然変わってフィクションの世界に展開していく。この唐突さが逆に映画的で興味の持続につながっていきました。

くんちゃんはフィクションの中で得た経験をリアルの世界に、持ち帰ってくるのですが、そこに静かな関心があり、ラストの未来ちゃんへの心の葛藤の落とし所で、しっかりした感動がありました。
良い映画だな。という感慨が湧いて来ます。

いささか家族が、くんちゃんのあしらい方がヘタにみえるのですが不器用な家族感の協調描写ということだったら納得いくかもしれません。

家族って綺麗な面だけじゃなく、葛藤と成長の連続だということを教えてくれる良作だと思います。
Arts0001

Arts0001