テオブロマ

未来のミライのテオブロマのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
1.2
好きくない。この「好きくない」という言葉のチョイスそのものがもう「大人の考える子供」感すごくて気持ち悪い。1〜2歳の子供でも「すき」「きらい」「やだ」くらいはっきり言うんですけど。子持ち目線で見てつっこみどころしかないファッション育児映画。監督お子さんいるんだよね…?くんちゃん4歳を主人公にしたからには子供を描きたかったんだよね?なのにそのメインテーマたる子供をちゃんと見たことが、本気で向き合って子育てしたことがなさそうというのがあちこちからポロポロポロポロ出ちゃってる。子供を描くっていうのは、単に子供特有の体型や言動をリアルに描写するって意味じゃない。監督が描きたいシーンを並べただけの何にも伝わってこない映画。

リアルとファンタジーのさじ加減が話の都合でコロコロ変わるので観ていて混乱する。おおかみこどもの頃から全然変わってない。何の捻りもなく説明的台詞をベラベラ喋るのも相変わらず。絶望や焦燥の表現だって「困り眉で大口開けて汗をかく」一択で芸がなさすぎる。他にないの?

下の子が生まれて上の子が嫉妬して…を描きたいのは分かるんだけどそれ以前の問題。子供から目を離しすぎ。新生児だろうが幼児だろうが子供なんてほっといたらすぐ危険につっこんで行くものなのに、ことあるごとに4歳児を長時間放置する両親も祖母も有り得ない。せめて子が小さいうちはコンクリート打ちっぱなしの階段に滑り止め敷くとか家具の角にクッション材貼るとかしない?車にキャンプ道具積み込む時も、あんな雑さじゃブレーキ踏んだ時後部座席の子供たちに降り注ぐよ。この後上にネットでもかけて固定するんだろうと思ってた。子育て世帯という説得力がなさすぎる。上の子の自転車特訓に付き合ってる間下の子(赤ちゃん)放置が1番あり得なかった。逆も然り。誘拐希望なんか?明らかに高所得世帯なんだから子供見る気がないならシッターくらい雇え。

くんちゃんが大きなバナナをそのままミライちゃんに渡してたけど、あんなん窒息まっしぐらだよ。仮に離乳食完了期だとしても、赤ちゃんなんて手に持ったもの全部口に詰め込んで喉詰まらせるものなんですけど。くんちゃんがミライちゃんの顔にお菓子並べたシーン、まだ離乳食始まってないミライちゃんに勝手に食べさせて窒息させかけて、子供放置してたお父さんが遅れて気付いて、放置してた自分を棚上げしてくんちゃんをめちゃくちゃ叱るみたいな展開になるのかと思った。それくらいやってたら感心したんだけどな。入浴シーンも、お父さんによる初沐浴っぽかったから退院から間もない時期のことだと思うんだけど、それならまだ母親は湯船に浸かれないはずなんだよね。普通に浸かってたけど。普通分娩でも帝王切開でも医師から禁止されてるはずだよ。ここで強くあぁ監督は育児まともにしてないんだなと思った。

こんな感じなのに、取って付けたように「外面いいイクメンを批判する母親」「使えない、分かってない父親」描写入れときましたみたいなとこも腹が立つ。

未来のミライちゃんはタイトルになってるのにほぼ関係ないし、過去のお母さんはくんちゃんの少し上くらいの歳の設定だろうにどう見ても中に大人入ってるし(声じゃなくて言葉遣い、表情の作り方の話)、ひいじいじはその世代にしてはスタイル良過ぎで違和感すごくて笑った。犬のユッコだけはいいキャラしてて好きだった。

お母さんの顔が鬼婆になるカットとか、ひいじいじの話になる時の強風表現とか、え…何…?としか言えない。前後の繋がりも意味もないけどとにかくこの絵が描きたかったんだろうな。それ以上の意味がマジでない。描きたいの描いただけで支離滅裂。くんちゃん視点イメージ?だとしてもくんちゃんが知るはずもないくんちゃん就寝中の母と祖母の台本棒読みしてるみたいな説明的すぎる会話も入れたりするからバランスが悪い。

未来の東京駅描写はとても良かった。あそこは純粋に見ててワクワクしたし続きが見たいと思った。最初にミライちゃんに暴力振るった直後から駅に放り出されるとかしてひとりぼっちの国編だけで1本作ればよかったのに。絶対そのほうが面白いの出来たと思う。

何というか、ジブリを意識しつつサブカル感も出したいみたいな中途半端さに共感性羞恥を煽られる。トトロのメイちゃんがお父さんにお花並べるシーンをそのまんま持ってきた描写あったけど、あそこまで露骨だとオマージュとは呼べずパクリの域では?遺失物センターの唐突なイヌカレー空間も謎。そこ以外は普通なのに何であの人だけ突然魔女みたいになるのか。あと退院時のお母さんの服装がいかにも童貞が好きそうなファンタジー感で細田守イズムを感じた。既婚者だろうが経産婦だろうが絶対に体型は崩れない、清らかな少女らしさを絶対に持たせたいって強固な意思には恐れ入る。ハチゲームの時のくんちゃんの反応もショタコンの考えるショタって感じだった。気持ち悪いです。

膨大な家族の系譜の中からくんちゃん自身のものを見つけないと…っていうのも、結局ミライちゃんの説明聞いてただけでくんちゃん自身は何もアクセスしてなくない?いつ見つけた(ことにされた)か全然分からなかったんだけど見逃しただけ…?見つけたから未来のくんちゃんに会えたんだよね?あれが見つけたってこと?くんちゃん話聞いてただけで何もしてないのに?順番逆じゃない?あと最初にくんちゃんに妹の名前候補挙げさせた割に最終決定にかすってもいないんだよね。子供の意思丸無視するなら最初から聞くな。

低評価なのも納得。そういえば声が合ってないとか棒読みなのとかついては、それ以外の点がダメすぎてあまり気にならなかったな。あといつものことだし…麻痺してる…時間を無駄にしたい時におすすめの映画。
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