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15時17分、パリ行きのとぽとぽのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
2.5
恐ろしく野心的、挑戦的、意欲的!だけどーーーー「大きな目的に向かって人生は導かれてる」の「向かって」の部分をこれでもかと強調した作品で、時折セリフとして本作のメッセージを指し示すけど終盤まで中々盛り上がりに欠ける旅行記(言うならホステルの平和パート?)。語弊を恐れずに言うなら本作の結構多くの時間は無駄なパートで、どうしても尺を伸ばしている感があった(言うならスター・ウォーズ8最後のジェダイのカントバイト?)。近年多くの実話を骨太な力作として手掛けてきたイーストウッド御大がいよいよ当事者たちを起用したという点でチャレンジングで既に一見の価値ありな本作は実話を映画にする価値より難しさを教えてくれるよう。
本作のメインパートを時折挟みつつ大方は回想のような形で進むストーリーテリングは全編の尺の短さ等も含めて監督の前作『Sully ハドソン川の奇跡』を彷彿とさせるものがあるけど、傑作だった前作に比べてどうしても散漫な印象を受けた。なのに突然とジャンプカットのように時間を飛ばしたりもする。クラブのシーンとかこれが誰の何の作品か忘れるほど。ある都市が旅行にいいということしか頭に残らないし、そんな男女の"異文化コミュニケーション"が本作のメッセージを語る上でどれほど大切かも疑問。また子供の頃から武器に慣れ親しめる環境や信仰心を描いている点は『ハクソーリッジ』と重なる所もあったけど、主観としてそこまでの重要性があったようには感じられなかった。ただ、いざ始まってしまえば早い。人生の意味・価値とは?その深淵なテーマに本作の中弛みはリーチできるのか?誰もが英雄になれるし、いざその時が来たら行動しなければならない。現代社会のテロへの向き合いかた。最後は実在の人物を起用したからこその良さもあったけど、どうしたイーストウッド?!音楽はいいけど、イーストウッド御大の映画ぽくない。映画として見る価値があるかと問われればイエス、純粋に面白いかと問われればウ~ン。かと言って本作の評価がこの素晴らしい三人の勇気ある行いを貶すものでは断じてない!

P.S.『硫黄島からの手紙』のポスター

観賞前
映像の色味そのままに硬派で骨太なズシンと来る作品を作られているのに、何歳になってもチャレンジング!ある時は主人公の年齢に自身がなるまで待ったり、ある時はラグビーボールにカメラを入れたり、またある時はエンドロールを無音にしたり、近年でも実際に飛行機を水面に浮かばせたり、と御大は小説原作のものも実話もその時々で最適な語り口を模索してきてこられた印象。だからこそ毎年のようにコンスタントに作品を世に出されては、それらが賞レースを賑わせたり息の長いヒットに繋がっているのかもしれない。早撮りで有名でありながら、同時に役者から素晴らしい演技を引き出すという一見相反することも可能にしてしまう徹底した現場感は今まで幾多の現場を体験してこられて、自身でも長年監督をされてきた賜物。とりわけ近年、実話を基にした作品をよく監督されている印象なので、当事者たち・実際のヒーローを起用した本作は一見大胆でありながら、同時に凄く腑に落ちる。そして、その手法がイーストウッド監督にかかればどのようなものになっているのかを早く見たい!また当事者たちのもう一度自分達で事件を演じるという決して精神的に楽ではないであろう挑戦をしっかりと刮目したい!という気持ちに駆られます。イーストウッド御大の挑戦はまだまだ続く。

TOMATOMETER20%AUDIENCE49%
The 15:17 to Paris pays clumsily well-intentioned tribute to an act of heroism, but by casting the real-life individuals involved, director Clint Eastwood fatally derails his own efforts.
Rolling Stone 2.5/4
RogerEbert.com ☆☆★★
EMPIRE & The Guardian ☆☆★★★
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