てっぺい

15時17分、パリ行きのてっぺいのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.0
【映画が映画でなくなる独創ラスト】
実際の人物が自分を演じるというこの映画のオリジナリティ。そのことで映画に何が出来るかを、ラストでしっかり証明している。“映画が映画でなくなる感覚”を味わう。

2015年に実際に起きた無差別テロ「タリス銃乱射事件」を描く。主演はプロの俳優ではなく“当事者本人”。さらに乗客として居合わせた人たちも出演。警官も本人達。実際に事件が起こった場所で撮影しているらしい。監督は『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』のクリント・イーストウッド。
◆以外ネタバレあり◆
ラストのフランス大統領に称えられるシーンは、役者ではなく実際の大統領(オランド大統領)。出演というか、実際の当時の映像と別撮(大統領の顔をうまく出さずに)を繋いで、まるで映画で大統領本人が3人と共演しているかのように描かれていた。この実写+映画のインパクトは、他のどの映画にも、どのドキュメンタリー映画にも出来ない、本人たちが演じているからこそできる事。クリント・イーストウッドはこれがやりたかったからこの映画を作ったのではと思うほど。映画が映画でなくなる、不思議な感覚に陥るシーンだった。
伏線回収というか、3人がテロリストを抑え込むに至る、彼らの能力を備えるまでの過去の描写が、前半の80分でゆっくりと描かれている。柔術や応急処置法はもちろん、一片の迷いもなくテロリストに向かっていったスペンサーの内にある信念などがそれ。そういう意味では、この映画が“逆回し”で見られたら面白いのにな、そんな事を思ったりした笑
また、彼らの友情や旅行中の描写は、どこかぎこちなさはありつつも、とても自然体。変な演出がない安心感があるので、平凡な人生の平凡な一コマに立ち会っているような、どこか落ち着いて見ていられる感覚があった気がする。
ただし…
単に1つの映画として見ると、逆にあまりに淡々としていて抑揚のない時間が80分続くので、エンターテイメントとしてはちょっとキツイかも。大詰めであるテロリスト確保のシーンも、煽りが長い分かなりあっさりに感じたし。
まあとにかく色々抜きにして、ラストの独創性のインパクトはホントに特筆モノな映画だと思います。
てっぺい

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