まさやん

15時17分、パリ行きのまさやんのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.0
何か大きなことを成し遂げたこともなく、何者にもなれず、ただただ日常を生きてきたあなたこそ、明日のヒーローかもしれない。

ヒーローは、空想の中で消費されるだけのものではない。
ヒーローは実在する。
ヒーローはあなたのすぐそばにいる。
そしてあなたの中にこそ、ヒーローは存在する。

そんな英雄(ヒーロー)をめぐるリアルと励ましを、齢80歳を過ぎた大巨匠、クリント・イーストウッドはいつも僕たちに与えてくれる。


「犯人以外は全員本人起用」という前代未聞の離れ業をやってのけた本作は、決して彼のこれまでの作品の完成度を失うことなく、臨場感というものの何たるかを見せつけられた気がしました。

カトリック系の厳粛な環境の中、やんちゃばかりして校長室に呼び出される毎日を過ごした小学生時代。

一念発起し、明確な目標に向かって努力を続けるも、最後の最後で夢を打ち砕かれる経験をする青年時代。

いつか見てろ!
いつか偉大な男になってやる!
といった若者ならではの反骨心も薄らいでいき、気づけば大人の仲間入りを果たしていた彼らは、それぞれに自分の居場所を見つけ、それぞれに幸せな生活を歩んでいたのです。

束の間の休暇を使い、まるで当時を思い出すかのように旧友との仲睦まじいヨーロッパ旅行を楽しむ3人。

そして事件は突然起こるのです。
予告なく訪れる危機的状況を救うのは、それまでの日常で淡々と培ってきた彼ら自身の勇気と行動力なのです。

未来の出来事をフラッシュ的にさし挟む錯時法をうまく活用した構成によって、緩やかな日常を冗長に感じさずに小気味よいテンポ感とともに描ききっていたのは流石イーストウッド、ノンフィクション作品の王様と言っても過言ではないでしょう。

まだまだ健在のクリント・イーストウッド監督、これからも目が離せません。
まさやん

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