ヴィズ

ナショナル・シアター・ライヴ 2018 「アマデウス」のヴィズのレビュー・感想・評価

5.0
これはまずい。死人が出る。

実際にこれ加筆してる時点で3回は死んでますし、まだ手足の震えが止まりません。


間違いなく大傑作。
というか個人的なフェイバリットとして心を突き抜かれました。

NTLは日本公開作品の…全作品では無いですが、出来る限り観てきたつもりですが。
どれにも甲乙つけられないジャンルと味がある中で、これも待ち望んでいた一作品でしたし、期待値も上げて観に行きましたけど、…腑を抉られるなんて物じゃない。雷が如く、望んでいた物の雲の上。正に一つの完成された芸術を観させて頂きました。感謝します。

モーツァルトとサリエリについては、簡単にですが人物やその顛末は知っているつもりでしたが…、
前半で一度殺されて。後半もこれが続くのと思ったら、残っていた半身すら殺されて。残る物は紙とインクのみ。
その何も残ってない観客である自分が観ているこの作品は一体何なのだろうか。これは何を観せられているのだろうかと。神を憎む位には感謝します。




何かを目的があり努力している人が見ると、確実に前半で死ぬ。対して、一つの事に事の全てを捧げてきた才のある人は後半で死ぬ。
前半で死ねた人は後半のこの贅沢な苦悩、その苦悩の差は比較されるべきなのだろうか。
この二人の境遇を役柄と共に見事に演じきる主演二人の演技が凄過ぎる。

この相反する二者が互いに認めている音楽という美。それは神に与えられた絶対的な美しさ。それを体現する為に舞台の上にオーケストラを持ち込む演出が抉過ぎる。生で観てたら確実に死んでる。舞台効果も相まって正に神々しく映る。
その神は二人に才を与えるだけで、その全てを黙殺する。

そしてその美を認めようとしない、認識できない社会。神に与えられた究極の美は、それを認めない人間によって殺される。

ここまでされたら、見ている我々には何も残りはしない。あるとすれば社会に属する嘲笑する諦観だけではないだろうか。
少なくとも私はあの最後の赦しで、あの拙い歌謡で決して笑えはしない。そこまで私は神ではない。



つらつらと凡人が書かせて頂きましたが、ただこの作品が私の心に突き刺さったって事だけ伝えてたかったのです。きっとサリエリさんは赦してくれると思います。
ヴィズ

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