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それだけが、僕の世界のmofaのネタバレレビュー・内容・結末

それだけが、僕の世界(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジンテの最後の演奏会のシーンは、
大画面で観たかったな~!!と悔やむほどだし。
しかも、ピアノ弾くだけじゃなくて。
その中に、純粋にピアノを弾く喜びが、
これでもかって程に、詰め込まれている事に、
震えました。

ジンテの世界の中で、
まるで自然と同じようなレベルで、
ピアノは存在し、彼自身の息吹であり、
鼓動であるという事を、
こう感じるんですよね。
ああ、魂のこもった演奏って、
こういう事なんだと、
そう感じさせてくれるんです。

こういう身が震えるような同じような感覚を
以前にも経験しておりまして。
それは、恩田陸作品の名作ともいえる
「蜜蜂と遠雷」を
読んだ時なんです。

こちらの作品では、言葉や文字で、
これほど音楽に感動させられるとは
思っていなかった。
世界は、音楽に満ちている・・・という言葉が、
音楽を聴かずとも、
こう胸にストンと落ちてきたんです。

本作においては、
音楽が、ジンテの世界に満ちている事を、
しっかりと感じさせてくれるんですよね。

そして、イ・ビョンホン様が、
ジョハの心情を繊細に、
見事に演じていたのが、本当に素晴らしかった。
母親を恨みながらも、甘えたいと思う心情
母親を守りたいという心情。
もう、これが、切ないし、健気なんですよね。

正直、暴力夫の元へ、幼い子供を残す心情は、
私には理解出来ないんですよね・・・・・
せめて、どっかの施設に
「子供を残してきたので引き取って下さい」
とか連絡シーンを入れたら良かったと思うんだけど・・・・
ただね・・・DVを受けた人の心情って分からないし、
そういう選択をしてしまうほどの事なのかも知れない。
ジョハも、自分を捨てておきながら、
ジンテばかりを守ろうとする姿に、
悲しみや怒りの気持ちがあっただろうけど。
でも、そうなんだよね。
根本的に悪いのは、母親ではなく、
そういう状況を作り出した父親なんだもの!!!
母親も被害者であって、
こういう風に責めてしまうのも、
被害者を更に傷つけてしまうんだな・・・と
ジョハの気持ちを考えながら、
私も反省した次第です。

イ・ビョンホン様は本当に素晴らしい演技だったと思う。
ついつい、パク・ジョンミン様の演技に目が行きそうだけど・・・。

そして、この作品の良い所はね・・・・
悪い人がいないって事なんだよね。
始めに出てきた大家さんも、
悪い人と思わせておいて、
娘がジンテの家に居座る娘の行動を止めず、
自由にさせていたり。
母親が病気の事を唯一話していたり、
ジンテを面倒みる事になるジョハに、
仕事を与えようとしたり。

ガユルも、ガユルの母親も、
ジンテの才能をそのまま認めてくれる、
凄く器の大きい人だったなぁ・・・という。

そういう意味では、悪い人がほぼ皆無で・・・
まぁ、こう上手く行き過ぎるよな・・・という感じはあるけども。

兄と弟
息子と、母親の関係に涙しつつ。
圧巻のピアノ演奏に、心を震わせられる秀作です。

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