れもん

人魚の眠る家のれもんのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.5
めちゃくちゃ泣いた。
夫婦二人で観て二人ともめちゃくちゃ泣いた。

東野圭吾の原作小説は数年前に読んでいて、もちろん原作も良かったけど、この映画は私的に原作より良かったかも…!

やはり文章より映像の方が「瑞穂の身体が動いている」という事実が視覚情報として認識されるから、そのぶん「瑞穂は生きている」と信じる薫子の気持ちに感情移入しやすかった。

原作を読んでいる時は薫子が生人の入学式に瑞穂を連れて行ったり生人の誕生日会に瑞穂を出席させようとする行動に「なんでそんなことをするんだ」と思っていたけど、映画を観ている時は「母親の行動としてわからなくもない」と思えた。

ストーリーは「脳死した娘を生きていると言い張る母親の話」としか言いようがないけど、薫子の気持ちに寄り添いながら2時間この映画の世界に浸っていると、何気ない日常のシーンを観ているだけでも本当に色んな感情が溢れてきた。

ここから先は、私の経験も含めての感想。

私は、過去に新生児科や小児科に長く入院する子供やその子供を看病する親の姿を数多く見る機会があった。
さすがに脳死した子供を看病している親は見たことがなかったが、言い方は悪いけど意思があるのかどうかよくわからないような状態の子供を看病し続ける親は沢山いて、そういう親子を見ながら私は「その行動に意味はあるのか?」「その行動の先に希望はあるのか?」という感情が生まれるのを禁じ得なかった。
脳死どころか生きている子供を看病している親に対してさえ、そう思ってしまったのだ。
我ながら人として最低だと思うが、そういう親子を見ていると、本当に綺麗事だけではない感情が湧いてしまうものだった。

そんな過去の自分と、この映画を観て薫子が瑞穂を連れ出した際に二人に向けられた奇異なものを見るような周りの目にイライラした自分は、矛盾していると思う。
一人の人間の中にさえ矛盾する感情が存在するのだから、複数の人間の感情が完全に一致することなんてやはりあり得ないし、だからこそ人の生死についてのルールを作るのは本当に難しいのだろうと思う。

そんな風に、観終わった後も色々と考えてしまう映画だった。

2020年映画鑑賞20作目。

【2020.07.22.鑑賞】
【2020.07.23.レビュー編集】
【2022.09.01.スコア訂正5.0→4.5】
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